世界的住宅ブームの行方

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2004年05月13日

  • 山田 雪乃
90年代以降続いた世界的な金利低下を背景に、世界各国で空前の住宅ブームが発生している。このような中、IMFは4月21日、豪州や英国、アイルランド、スペインにおける過熱気味な不動産市場への警鐘を鳴らした。中でも、豪州と英国の住宅価格上昇に対する懸念が強い。住宅価格が高騰した要因として、(1)実質金利の低下、(2)実質可処分所得の増加、(3)過剰流動性(低金利だけでなく、金融市場の規制緩和や金融機関の競争激化によって発生)、(4)個別要因-(1)初回住宅購入への強い意欲(豪州では新規住宅購入補助金の交付、スペイン・アイルランドでは25~35歳人口の増加)、(2)タイトな住宅供給構造(オランダ、英国)、(3)外国人によるリゾート物件の購入(スペイン)、(4)税制インセンティブの付与(オランダ、スペイン)が挙げられている。

住宅購入を取り巻く環境改善は、もちろん重要である。しかし、豪・英両国ではそれだけで説明されない要因が働いているかもしれない。例えば、人がお金を注ぎ込む目的は自動車や旅行、洋服など様々だと思うが、両国ではとりわけ一戸建て住宅を持ちたいとの願望が強い。住宅を購入してDIYやガーデニング等で少しずつ手を入れていくのだ。また、不動産バブル崩壊後の日本では値上がり期待などすっかり影を潜めてしまったが、英・豪両国では住宅価格が90年代後半以降上昇し続けており、過去2年では年間平均20%も上昇した。いまだ値上がり期待が続いていると考えても不思議でない。このような国民性を配慮すると、日本とは異なる結末を迎えるかもしれないとの期待を抱かせる。

では、住宅ブームは軟着陸するだろうか。豪州では03年末、世界に先駆けて計50bpの利上げを実施した。足元では、住宅価格の下落基調の鮮明化を背景に中銀は5月7日に中立スタンスを示唆、同時に、投資用住宅を対象とした直接規制にも動いている。一方、英国では住宅価格が再上昇し始め、5月6日に3回目の利上げを実施、追加利上げ観測が続く。今後どのような対応がなされるか、注目して行きたいところである。

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