「大和の中国投資情報」創刊
2004年04月23日
創刊号の視点は「ソフトランディング」
爆発的な中国需要の拡大が日本経済に大きな恩恵を与えている。国内産業の空洞化を招き、さらにデフレを輸出するといった中国脅威論はこのところすっかり後退し、過去1年ほどで中国に対する見方は大きく変わった。昨年から続いている外国人投資家による旺盛な日本株買いにも、中国要因をバネに日本企業が復活を遂げていることが多分に反映されている。
その中国における現下の課題は、過熱する投資ブームの沈静化である。昨年の9.1%という高成長の原動力は、不動産、鉄鋼、自動車、セメントなどの部門における大幅な投資拡大であった。しかし、原材料価格の高騰やインフレ懸念に繋がったため、中国政府は金融引締め策を強化している。
今年1-3月の実質成長率は9.7%であり、今年の目標を実質7%成長とした中国政府には景気過熱と映っているだろう。おそらく今後行われる投資抑制策は中国経済をスローダウンさせるだろう。過熱する投資ブームのソフトランディングは、中国経済と株式市場の安定化だけでなく、日本の景気回復の持続性にとっても重要な意味合いを持っている。
一方、今回の投資ブームを通じて明らかになったことは、依然として電力、道路、鉄道などの社会的基盤が不足しているということであった。産業インフラ、生活インフラを充実させるための投資拡大の余地は大きい。また中国の長期的な成長性を評価するとき、最も魅力ある市場は自動車である。昨年の自動車生産は100万台増加し、439万台に達した。600万台市場の日本を抜き、米国に次いで世界で2番目に大きな市場になるのは間近である。日本の経験を持ち出すまでもなく、自動車産業の発展がもたらす各産業への波及効果は大きい。
中長期的な成長可能性に魅力ある中国だが、過熱を抑える政策の帰結が、短期的にはもっとも注目されるポイントである。
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