大規模投資続ける台湾の液晶メーカー

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2004年03月19日

  • 杉下 亮太

世界最大の液晶生産地へ
台湾で大型TFT液晶の生産が開始されたのは1999年、つい最近のことである。日本企業からの技術移転によって急速に実力をつけ、02年には早くもシェアで日本を追い抜き、韓国に次ぐ世界第2位の液晶生産地となった。今年は台湾メーカー4社の第5世代(5G)工場(注1)で増産が本格化する見通しで、同時に6G工場の建設も始まった。5G以降の液晶工場は日本には今のところシャープの亀山工場しかないが、台湾には現時点で4つ存在し、05年末までにさらに少なくとも7つの5Gないし6G工場が立ち上がる計画である。台湾が液晶生産シェアで世界最大となる日は間近に迫ってきた。

台湾メーカーが生産能力拡大に積極的なのは、従来のノートPC・モニターに加えて、液晶テレビという新しい需要が立ち上がり始めたためである。液晶テレビは年間市場規模1億5,000万台といわれるブラウン管テレビの大半を将来的に置き換えるものと期待されている。5G工場ではPC用も多く生産されるが、6G工場は基本的に大型テレビ用の工場となる。テレビ用の液晶パネルは技術的難易度が高く、台湾メーカーには困難という意見が従来多かった。しかし、液晶テレビ市場が立ち上がり始めた一方で、日本の液晶メーカーはシャープを除いて大型投資を実施していないため、テレビメーカーは韓国ないし台湾から多くのパネルを調達せざるを得ないはずである。

生産技術力とカラーフィルターがポイント
ただし、6G工場の立ち上げを計画通りに実現できるかどうかは、企業間格差が生じそうだ。ポイントは各社の生産技術力とカラーフィルター(注2)内製化の成否だろう。まず、6G工場では5G工場に比べて格段に高い生産技術力が要求され、歩留まり改善に従来よりも時間がかかるとみられている。一方、カラーフィルター製造設備は基板サイズの大型化に伴って液晶工場に隣接させる必要が生じており、加えて設備投資が遅れたために供給不足が長期化している。そこで、台湾の液晶メーカーもカラーフィルターの内製化に取り組み始めた。しかし、カラーフィルター製造は容易なものではない。特に大型化とともに難易度が上がっており、各社とも当初は相当苦戦するものと予想される。

(注1)液晶工場は世代によってガラス基板サイズが異なる。5G工場は02年に登場し、1,100×1,300mm前後。6G工場は1,500×1,850mm程度。
(注2)液晶ディスプレーをカラー表示させるための部材。日本・韓国メーカーは内製化率が推定50%~70%だが、台湾メーカーは従来外部調達中心であった。

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