環境税導入、国民的議論を
2004年03月10日
温暖化対策税の議論は、1997年12月に採択された京都議定書の内容を達成するための手段として出てきたものである。京都議定書(京都議定書は発効要件を満たしていないため、まだ発効していないのであるが・・)では、温室効果ガス排出量を2008年~2012年の平均で90年水準の6%減とすることが盛り込まれている。わが国における温室効果ガス排出量の約9割はCO2が占めており、CO2の排出量を抑えることが京都議定書の達成のためのポイントとなるのである。
京都議定書での約束達成に向けて、政府は、2002年に「地球温暖化対策推進大綱」を策定した。大綱では、京都議定書での約束期間までを3つの期間に区切り、節目ごとに対策の進捗状況を評価、見直す方法を採っている(=ステップ・バイ・ステップ・アプローチ)。
このような流れの中で、環境省の中央環境審議会では、税制に関する専門委員会を設置し、2003年8月に報告書をとりまとめた。報告書の中では、温暖化対策税を導入する場合、化石燃料(石油、石炭、天然ガス)の採取量や輸入量などを課税対象として、輸入業者や採取者などに炭素1トン当たり3,400円(ガソリン1リットル当たり約2円に相当)程度の税を課す案を、国民による議論のたたき台として公表した(温暖化対策税による税収は、温暖化対策のための補助金や減税の財源として活用)。
もっとも、温室効果ガス排出抑制のための手段は、必ずしも税に限られるわけではない。各企業・各家庭などの意識を変えることによって、税による対策を不要とする道もまだ十分に残されている。もちろん、議論の場でも環境税導入が決定したわけではなく、先に述べた地球温暖化対策推進大綱の見直し作業において、税による温暖化対策が必要とされた場合に、導入に向けた検討を行うこととされているのである。
しかし、国民の間で、環境保全に対する議論は十分になされていると言えるだろうか。環境に対する配慮が必要という漠然とした方向性はあっても、温暖化対策として税を導入するとしたら誰が負担するのか、そもそも税を導入する必要があるのか、税を導入しないとしたらどんな手段が有効なのかなど、議論は尽くされていないように思われる。
税による対策は是か、非か。今こそ、環境保全のあり方について積極的な議論が必要ではないだろうか。地球温暖化対策推進大綱の見直しは2004年中に行われる。
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