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個人消費の切り口

2004年03月09日

渡辺 浩志

知人が海外旅行にいくという。聞けば、高級ホテルを泊まり歩き、クルージングにエステ、ブランド物のショッピングで数十万円をたった一週間で使うそうだ。サラリーマンの私からすると理解に苦しむ。これまでパソコンや自動車など高額な消費をしてきたものの、そのすべてはスペックとの見合い、すなわちコストパフォーマンスを重視し、吟味に吟味を重ねた上での消費だったからだ。エステでどれだけの改善効果があるのか、それをその代金と比べたとき果たして損なのか得なのか?自らの価値観に照らすと、とても財布の紐を緩める気にはならないのである。

経済学的には財やサービスの分類は所得の増え方の範囲内か、所得の増加以上に出費するかによって(すなわち所得弾力性が1より大きいかどうかで)、普通の出費か贅沢出費かに分かれる。ただ、そのような分類をしたところで、知人の消費行動が理解できるわけもなく、単なる価値観の違いと割り切って話を聞き流すしかないのである。しかし、先日、マーケティングの本を読み、異なる切り口に感心した。そこでは消費には、財かサービスかという分類や、所得に対する支出行動がどうかといったことではなく、右脳による消費と左脳による消費が存在するという見方が展開されていたのである。左脳消費とはまさに筆者のようなものの見方であり、コストパフォーマンスを突き詰めた消費行動である。一方、右脳消費とは冒頭の知人のように、肌で感じる満足度や憧れを具現化する消費である。消費は個人の満足を最大化するよう行われる、というのは経済学の基礎中の基礎であるが、そもそもその満足度を脳の別々の部分で判断しているため理解が食い違うのであろう。

経済の先行きを見通す上で個人消費の予測は大変難しい。マクロで見た場合、消費の動きは非常に緩やかであり、大きく見誤ることはないものの、雇用・所得環境などファンダメンタルズに照らしてもその動向を正確に見抜くことは至難の業だ。消費の予測は一億二千五百万人の心理を読むようなものであり、分析には伝統的な手法はあまり威力を発揮せず、定石もないといって良い。常に時代に即した切り口を持って臨む必要があることを痛感した。

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