1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. 失業率低下について

失業率低下について

2004年02月10日

取越 達哉

2002年後半~03年前半にかけて一時5.5%台まで上昇した完全失業率が、昨年12月に4.9%まで低下したことは、注目に値する。90年代以降、失業率は景気回復局面でもほとんど低下せず、一貫して上昇を続けてきたためである。失業率の低下は何か構造的な変化が生じつつあることを示唆しているのだろうか?その点をチェックするためにまず、失業率の低下を(1)15歳以上人口要因、(2)雇用者要因、(3)自営業・家族従業者要因、(4)非労働力人口要因の4つに分けてみると、(1)を除くいずれもが、最近の失業率の低下にわずかづつ寄与していることが分かる。すなわち、(1)15歳以上人口の増加が続いているが、(2)雇用者がわずかに増加に転じつつあること、(3)自営業・家族従業者要因の減少ペースが緩んでいること、(4)非労働力人口が幾分増加していることが(労働市場からの退出)、失業率の低下をもたらしたということになる。90年代の2度の失業率低下局面では、それらのいずれかが足かせとなり、失業率の低下が限定的なものになったのである。いずれにせよこうした分析からは、足許の失業率の低下が大きな構造変化を示唆しているとは感じられない。

過去の経験からは、雇用者数の増加が、失業率の更なる低下にとって特に重要であることは明らかである。雇用者数が増加するかどうかは、マクロ経済の改善動向にも大きく依存するが、構造的失業(年齢、職種、賃金などの雇用のミスマッチや、転職に伴う摩擦等による失業)の解消も、非常に重要である。近年大きく増加しているとみられる構造的失業は、雇用者数の伸び悩みや失業率の上昇をもたらしている一因であることは疑いない。ただし、情報サービス業中心にすでにバブル期を上回る水準に達している新規求人数と改善ペースの鈍い雇用者数のギャップの大幅拡大や、UV曲線が大きく右上方へシフトしたままである事実からすれば、構造的失業者が解消に向かう兆しはまだないといえる。構造的失業者の増加は、産業構造の変化の際には避けられない事態でもあるが、雇用者数や失業率の本格回復にとって大きな課題である。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加