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青色LED発明の対価200億円、知財は富の源泉か?

2004年02月04日

コンサルティング第三部 主任コンサルタント 耒本 一茂

青色LED発明の対価をめぐる訴訟判決が、紙面を賑わせている。2004年1月30日、東京地裁によって第一審判決が下され、日亜化学工業は、元従業員であり青色LEDの発明者である中村修二氏に対して、200億円の支払命令を受けた。発明者が受けるべき「相当の対価」は、会社側が得た独占的な利益(1208億円)と、発明者の貢献度(50%)を考慮し、約604億であると算出された。中村氏の請求額は、200億円であったため請求額通りの支払いが命じられたことになる。

今回の判決にあたり、特許法35条に定める「相当の対価」が論点となった。従業員の発明が巨額の富を生んだ場合、社内発明規定で定める発明報奨金が相当の対価として認められない場合があるからだ。ここで問題となる「相当の対価」は予測・算出が困難であり、特許法35条を変更又は廃止しようという意見もある。また、企業の経営活動に与える影響も懸念されるとして、企業と個人の契約である「社内発明規定」を重視すべきであるとの考えもある。適切な対価を還元できるように、規定の見直しが急務となったといえよう。

この判決に対する社会の反応は、企業や研究者等の立場によって賛否両論である。今回の判決で不利となる企業側は、「過大評価であり経営面にマイナスである」と、反応は冷ややかであった。一方、研究者の立場からすれば、発明をすれば「研究成果が自己の利益として還元される」として、研究意欲が向上するという見方もある。日本のエンジニアの地位は、欧米と比べ低いとされており、研究者の研究意欲を阻害していることが問題視されている。エンジニアの地位向上のためには、優れた発明をした社員に対して「発明の対価」を支払う必要があるだろう。最終的には、研究者の志気向上により優秀な発明が増加して、発明者への報酬を支払ってもなお企業の収益を高めることができる制度をつくることが重要となろう。

「発明者への還元」という観点からは、大学の知財活動を担うTLOや知的財産本部の方が進んでいるといえる。整備が進んでいる大学では、研究者のインセンティブが高まりつつある。今後、産学官全体が一体となって、最適な知財システムを整備することが急務である。また、能力の高い社員は、自らの発明を会社から買い取り起業するケースもでてくるだろう。起業後は、更に株式上場に成功することにより、「相当の対価」以上の報酬を獲得できる可能性もある。今回の判決によって、「知財は富の源泉」であることが再認識されたといえよう。

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