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市場との対話失敗が懸念されるFed

2004年02月02日

成瀬 順也

1月28日、米国金融市場に衝撃が走った。前日から2日間に渡って開催されたFOMCの声明文で、「かなりの期間(a considerable period)」金融緩和政策を維持するとの表現が、金融緩和政策の解除まで「忍耐強くなることができる(it can be patient)」と変更されたためである。金融市場では、「すわっ、利上げへの布石か」との反応から、株安、債券安、ドル高が進んだ。影響はそれだけにとどまらず、金を始めとした貴金属価格の下落や、海外株式市場の下落へと波及している。

翌日に公表された前回FOMC(12月9日)の議事録を見ると、今回の文言変更は既に前回から議論されていたことがわかる。12月に変更していれば、「かなりの期間」が削除されるかどうか市場で真剣に議論の対象となっていた時期だけに、ショックは小さかったはずである。しかし、ここ一ヶ月間、雇用統計、小売売上高、鉱工業生産、耐久財受注と、経済成長率の鈍化を示す景気指標が相次いだため、前回変更されなかった文言が今回変わる訳がないという見方が、市場に醸成されていた。Fedの対応は明らかに後手に回っており、「市場との対話」能力が低下していると判断せざるを得ない。

Fedは昨年も、長期国債の大量買い入れを検討しているかのようなイメージを市場に植え付けたうえで、あっさり否定して長期金利の急騰を引き起こす過ちをおかしている。また、10月28日のFOMCでは2005年後半まで雇用の本格回復はないと予測しておきながら、次のFOMCでは物価に対するリスク判断をデフレ警戒から中立に戻したりしている。雇用の本格回復以外に、どこにインフレ圧力があるのであろうか。最近のFedの対応を考えると、今回のFOMC声明文から読み取らなければならないリスク材料は、「早期利上げ」ではなく、Fedが「市場との対話に失敗」することによる混乱であろう。

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