中国発のインフレ?

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2004年01月19日

  • 櫛田 雅弘
『中国発の世界的なデフレ』。中国が、低賃金な労働力を背景に、世界の生産拠点として、低価格製品を世界中に供給し、それが世界的なデフレを誘発させる。こんな議論が真剣に繰り広げられ、中国脅威論がマスコミを賑わしていたのは、つい半年、一年前のことであるが、現在の中国内の状況は、まったく逆のトレンドにある。

2002年には▲0.8%とマイナスを記録した消費者物価指数は、昨年初からプラス傾向が定着化し、昨年11月には前年比で3.0%にまで上昇している。食料品価格が、国際価格の上昇と天候不順で上昇したことが、主たる要因ではあるが、その他の一次産品も、ここ数年の急速な経済発展の影響で、上昇基調にある。石油価格は、世界的に高止まりが意外に続いているが、中国では、石炭、鉄鋼、アルミなどの非鉄などの産品価格が、昨年来上昇傾向にある。石炭価格の高騰により、工業・商業用電力価格は、04年年初から約2.5%引き上げられてもいる。他の公共料金でも、一部で、高速道路料金を引き上げる動きもみられている。

昨年、香港上場の中国株で構成されるH株指標は、年初の2,000ポイントから年末には5,400ポイントにまで上昇したが、そのなかでもとりわけ上昇が顕著だったのが、こうした素材関連株であった。これらの企業のファンダメンタルズ(価格上昇基調の持続と健全な需要の伸び)には変化がないが、一部企業から株式売り出しが行われるなど、目先は投資家の利食いを誘っている。一次産品の価格高騰が、最終製品価格にまで波及するかは注目されるところである。例えば、TVや自動車といった製品価格は、競争の激化で、価格低下基調がずっと続いているからだ。電機、衣料など、加工組立に属する銘柄には、昨年の売買ラリーに乗り遅れた銘柄も多く、これら企業の最終製品価格にも下げ止まりから上昇に転じるようだと、投資家の銘柄選択の幅を広めることになろう。

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