EU拡大のインパクト
2004年01月14日
欧州における今年最大のイベントは5月のEU(欧州連合)加盟国の拡大であろう。ポーランドやチェコ、ハンガリーなど中・東欧10カ国がEUに加盟する。現在、加盟15カ国で人口約3.8億人、GDP(国内総生産)約9.1兆ユーロ(約1230兆円)のEUは、10カ国の新加盟により、人口約4.5億人、GDP約9.5兆ユーロ(約1286兆円)の新EUになる。
新加盟10カ国は、人口では約7500万人とそれなりのインパクトをもつが、経済規模では、現EUの 5%(GDP)に過ぎない。しかも、90年代半ば以降、EUとの関税撤廃・低率化などが進展していることにみられるように、新加盟国の経済は既にEUに組み込まれており、経済的に新たなインパクトはないとの見方が一般的だ。
しかし、新加盟10カ国が抱える中長期的な問題は、EUの経済構造改革の進展を加速させるかもしれない。それは人口の減少である。10カ国のうち、人口が自然減(死亡者数が出生者数を上回る)している国が8カ国、社会増(移民の流入)を加味しても、6カ国で人口が減少している。現EU15カ国では、自然減または増加ゼロが4カ国で、社会増を加えると、全ての加盟国で人口が増加している(いずれも2002年のデータ)。
90年代初めの社会的な混乱の影響もあって、現EU各国へ多くの移民が行われた。その影響もあって、近年人口の減少が明確となってきている。そのため、現EU15カ国以上に急速に、人口の老齢化に伴う社会保障問題などが深刻化する可能性がある。または、ドイツやスペインのように、移民の受け入れをある程度拡大するしかない。その場合、労働力の流動化と、それに伴って社会的な問題も浮上しよう。
ドイツやフランスの経済構造改革の進展状況が今年も注目を集めようが、新加盟国が抱える問題の解決に向けた動きが、それに影響を与えるかもしれない。
新加盟10カ国は、人口では約7500万人とそれなりのインパクトをもつが、経済規模では、現EUの 5%(GDP)に過ぎない。しかも、90年代半ば以降、EUとの関税撤廃・低率化などが進展していることにみられるように、新加盟国の経済は既にEUに組み込まれており、経済的に新たなインパクトはないとの見方が一般的だ。
しかし、新加盟10カ国が抱える中長期的な問題は、EUの経済構造改革の進展を加速させるかもしれない。それは人口の減少である。10カ国のうち、人口が自然減(死亡者数が出生者数を上回る)している国が8カ国、社会増(移民の流入)を加味しても、6カ国で人口が減少している。現EU15カ国では、自然減または増加ゼロが4カ国で、社会増を加えると、全ての加盟国で人口が増加している(いずれも2002年のデータ)。
90年代初めの社会的な混乱の影響もあって、現EU各国へ多くの移民が行われた。その影響もあって、近年人口の減少が明確となってきている。そのため、現EU15カ国以上に急速に、人口の老齢化に伴う社会保障問題などが深刻化する可能性がある。または、ドイツやスペインのように、移民の受け入れをある程度拡大するしかない。その場合、労働力の流動化と、それに伴って社会的な問題も浮上しよう。
ドイツやフランスの経済構造改革の進展状況が今年も注目を集めようが、新加盟国が抱える問題の解決に向けた動きが、それに影響を与えるかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日