中国:外資企業依存の新局面
2004年01月09日
90年代以降の中国の成長パターンは、基本的には外資企業の進出による輸出産業の急拡大にあった。電子・通信機器を中心に、近隣諸国のみならず、世界中から有力企業が中国に生産基地を移設、輸出を強化してきた。2000年代に入ってもこのような基本パターン自体に変化はない。むしろ一時鈍化していた企業進出が、WTO加盟前後から再度活発化、輸出振興にも拍車がかかっている状態である。現実にこのような分野を中心に、輸出に占める外資企業のシェアは5割を突破する水準まで達している。
このような成果は、中国にとって、外資企業誘致における競争力強化という面でも、自信を深める背景となっている。WTO加盟により、制度面での整備が進み、契約遵守の意識が浸透しつつある点が従来とは異なってきている。あるいは将来的にこのような方向へ向けての進展が見られるだろうとの意識が、外資企業の間に広まりつつあることは指摘できるだろう。
しかも中国では現在、一層の外資企業進出拡大を目指し、新たな動きをはじめている。従来対中国直接投資は、現地法人の創設等、新規の企業設立を太宗とし、企業買収、あるいは資本参加等、既存の資本取得は5%程度のものに過ぎなかった。しかし世界的な資本の動きは完全に逆となっており、M&Aによるものが8割を占める。中国もM&Aを活性化することにより、一層の資本呼び込みレベルアップが可能との判断が支配的なようだ。このような方向へ向けて、制度や体制の整備を進めているのが中国の現状である。
中国の意図は、外資企業によるM&A活性化により、国有企業効率化、生産性向上を図ることである。90年代後半以降国有企業整理が進んだとはいえ、尚その勢力は巨大であり、その意味で非効率性は色濃く残るといえる。他方でWTO加盟により、中国も国内市場開放を進めざるを得ない状態に置かれている。外資企業としても巨大市場である中国の門戸開放は、極めて大きなビジネスチャンスとなりうる。とすれば国有企業等、国内企業に対する何らかのかたちでの資本参加を促進し、併せて企業部門の全面的な効率性改善が可能になれば、さらなる経済近代化が達成されるとの考え方は強いだろう。いずれにしても、中国における外資企業政策は、新たな段階に入ったと見ることができよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月08日
非農業部門雇用者数は前月差+52.8万人
2022年7月米雇用統計:雇用環境は堅調、労働需給はタイトなまま
-
2022年08月05日
2022年6月消費統計
感染状況の落ち着きから、緩やかな回復基調を維持
-
2022年08月05日
内外経済とマーケットの注目点(2022/8/5)
米国市場では8/10に発表される7月の消費者物価が注目される
-
2022年08月09日
投資家は非財務情報をどのように活用しているのか
よく読まれているコラム
-
2022年07月21日
2022年度の最低賃金引き上げはどうなるか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2022年01月12日
2022年米国中間選挙でバイデン民主党は勝利できるか?
-
2021年12月01日
もし仮に日本で金利が上がり始めたら、国債の利払い費はどうなる?
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?