年金運用コンサルティングとソフトダラー
2004年01月08日
資産運用ビジネスのオピニオンリーダーとして著名な1人である米国のピーター・バーンスタイン氏は、昨年執筆したエッセイ(FAJ 7~8月号)の中で資産運用ビジネスは中長期的観点から見て変革期を迎えている旨の発言をしている。その中でリサーチ分野についてはソフトダラー方式からハードダラー方式に情報提供形態は変化していく旨の指摘をしている。簡単に述べれば、運用機関等の機関投資家が証券会社への発注の見返りの謝礼として「コンサルティング」や「リサーチ情報」を提供されるケースをソフトダラー方式と称し、発注の有無と無関係に、別途料金を支払って「コンサルティング」等を受けるケースをハードダラー方式と言うのである。
年金のプランスポンサーにとっては、運用機関が証券会社へ支払う手数料は本来プランスポンサーの負担する費用であるとの認識をしており、運用機関がソフトダラーを証券会社から提供されるような事実に対して、モラルハザードをきたしエージェンシーコスト(代理行為のコスト)の増大を招くとして、ソフトダラー方式に対して極めて批判的である。これは年金プランスポンサーとして、受益者の為の専一的な貢献を求められる「受託者責任」の完遂上、当然の帰結といえる。
また、第三者機関たる年金コンサルティング会社は、専門家としての誠実性と技術的な適格性を遵守するために、プロフェショナル・アプローチとして、コンサルティング報酬を適正にハードダラー方式として受け取るのである。何故ならば、適正な報酬はコンサルティングの革新性やスキルの保持に欠かせないものと考えられているからである。つまり適正な報酬を徴収する行為は外部コンサルタントのグローバルスタンダードとして位置付けられている。
ところが、日本の年金資産運用を巡るコンサルタントの中には、自らの倫理欠如も顧みず、不当に低廉な価格でコンサルティングを請け負い、系列の証券会社に対して売買発注を誘導するようなケースが散見される。これこそ、忌むべきソフトダラー方式であり、利益相反との批判を免れないものである。もともと、コンサルティング・ビジネスは薄利(人件費プラスα程度の利益水準)であるが故に、適正報酬を守る事はビジネス上の根幹とされるのである。まさに、プロフェショナル・インテグリティ(専門家としての誠実性)を確保するに欠かせ無い要件というべきである。従って、最近の米国においては、不透明かつ不明瞭な取引を回避するため、「ハードダラー方式」を時代の先端として選択しているのである。年金受益者の最終利益を守る為には、年金ファンドを巡るプレイヤーの「倫理観」が極めて重要である。コンサルタント側が襟を正さねばならないのは当然である。また、プランスポンサー側も安価であれば何でも良いという判断が、利益相反行為を招き、「受託者責任」上問題があるという指摘を受ける事態は避けるべきであろう。
年金のプランスポンサーにとっては、運用機関が証券会社へ支払う手数料は本来プランスポンサーの負担する費用であるとの認識をしており、運用機関がソフトダラーを証券会社から提供されるような事実に対して、モラルハザードをきたしエージェンシーコスト(代理行為のコスト)の増大を招くとして、ソフトダラー方式に対して極めて批判的である。これは年金プランスポンサーとして、受益者の為の専一的な貢献を求められる「受託者責任」の完遂上、当然の帰結といえる。
また、第三者機関たる年金コンサルティング会社は、専門家としての誠実性と技術的な適格性を遵守するために、プロフェショナル・アプローチとして、コンサルティング報酬を適正にハードダラー方式として受け取るのである。何故ならば、適正な報酬はコンサルティングの革新性やスキルの保持に欠かせないものと考えられているからである。つまり適正な報酬を徴収する行為は外部コンサルタントのグローバルスタンダードとして位置付けられている。
ところが、日本の年金資産運用を巡るコンサルタントの中には、自らの倫理欠如も顧みず、不当に低廉な価格でコンサルティングを請け負い、系列の証券会社に対して売買発注を誘導するようなケースが散見される。これこそ、忌むべきソフトダラー方式であり、利益相反との批判を免れないものである。もともと、コンサルティング・ビジネスは薄利(人件費プラスα程度の利益水準)であるが故に、適正報酬を守る事はビジネス上の根幹とされるのである。まさに、プロフェショナル・インテグリティ(専門家としての誠実性)を確保するに欠かせ無い要件というべきである。従って、最近の米国においては、不透明かつ不明瞭な取引を回避するため、「ハードダラー方式」を時代の先端として選択しているのである。年金受益者の最終利益を守る為には、年金ファンドを巡るプレイヤーの「倫理観」が極めて重要である。コンサルタント側が襟を正さねばならないのは当然である。また、プランスポンサー側も安価であれば何でも良いという判断が、利益相反行為を招き、「受託者責任」上問題があるという指摘を受ける事態は避けるべきであろう。
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