生物多様性を評価するための共通のモノサシ

2010年11月8日

2010年10月、「生物多様性の保全/持続可能な利用/遺伝資源からの利益の公正・衡平な配分」を目的とする生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が名古屋で開催された。持続可能といえば、この11月にメキシコのカンクンで、国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)も開催される。この2つは双子の条約とも呼ばれる。

日本では、「地球温暖化対策の推進」を目的の一つ(※1)としたエコ政策が2010年大きく盛り上がった。盛り上がりすぎた結果、エコカー補助金は申請が拡大し予定よりも早く打ち切りになり、家電エコポイントも販売が好調で予算が底を突く可能性が出てきたとして、付与ポイントの減少など制度変更が発表された。こうした「エコ買い」が進んだ理由を、エコカーやLED照明購入者のアンケートから拾うと、補助金やポイントによる「お得感」と共に「燃費がいい/消費電力が少ない」が上位にある(図表1)。購入時(初期費用)が多少高くても、利用中(ランニング費用)を含めたトータルでみて割安になると考えたから購入したことになる。ITでいえばTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)、システム導入から維持・管理などにかかる総費用で評価するのと同じである。

経済価値を環境価値に置き換えればライフサイクルアセスメントであり、持続可能な利用を目指していることになる。この考え方は今に始まったことではなく、江戸時代は究極の循環社会だったといわれているし、豊かになった今でもリサイクルや詰め替え商品に対する抵抗感は少ない。すでに多くの日本人は「持続可能な利用」の考え方は身についているといえよう。おしむらくは、生物多様性が持続可能な社会に必要であるという認識が薄いことである。理由の一つは、生態系や生物多様性が、レアアースや石油のような「資源」とみなされていないためであろう。COP10では「The economics of ecosystems & biodiversity(TEEB:生態系と生物多様性の経済学)(※2)」という生物資源の経済的側面を評価した最終報告書が発表された(※3)。またCOP10とそれに先立つCOP/MOP5(※4)における先進国と途上国の対立も記憶に新しいところである。これらの出来事は、生物や生態系の「資源」としての価値をクローズアップした。何でも「お金」に換算するのはいかがなものか、というお叱りもあろう(※5)が、共通のモノサシとして一番計算しやすいことには賛成していただけるものと思う。ただし、あくまで「モノサシ」であり、目的は「我々、人類の持続可能な生存」であることを忘れてはならない。

図表1 エコ製品購入の理由
(出所)左図:「エコカーに関する調査」 オリコン・リサーチ株式会社 オリコン・モニターリサーチ
     右図:「LED電球に関する意識調査 」 アイシェア

(※1)その他の目的としては『経済活性化』、さらに家電エコポイントには「地デジ対応テレビの普及」がある。
(※2)http://www.teebweb.org/
(※3)世界銀行によると「農地、森林、鉱物、エネルギーの価値は世界全体で44兆ドルを上回り、うち29兆ドルは途上国にある」が、これらは主に民間セクターが生み出す価値であり、保全がなされないと、農業生産性や水力発電能力の低下など経済の他のセクターにマイナスの影響をもたらす可能性があるとしている。COP10では、TEEBの成果を国民経済計算に反映させるツールを開発するプロジェクトの発足が発表された。 『世界銀行が「緑の」国民経済計算を提唱 日本を含めた新たなグローバル・パートナーシップを立ち上げ』 世界銀行プレスリリース 2010/10/28
(※4)カルタヘナ議定書締約国会合(The Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties of the Protocolの第5回会議で10月11日~15日に開催された。遺伝子組み換え生物が輸入国の生態系に被害を与えた場合の補償ルールを定めた「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が全会一致で採択された。
(※5)COP10の「サステナビリティレポートのための生態系サービス指標」というサイドイベントでは、「望ましい指標は、やっぱりお金に換算するのが企業はわかりやすいでしょう」という発言に、会場は笑い声で包まれたそうである。 『COP10はTEEB DAY(25日)』ビジネスパーソンのための「COP10の歩き方」 ECO JAPAN

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