サマリー
◆2026年3月の卸売物価(工業製品出荷価格)指数は前年同月比+0.5%(以下、断りのない限り変化率は前年比、前年同期比、前年同月比)となり、2022年9月以来、3年6カ月ぶりに上昇に転じた。中東情勢の緊迫化により、原油や原材料の価格が上昇したことが主因である。工業製品出荷価格指数の内訳をみると、生産財価格指数は+1.0%となった一方で、生活財価格指数は▲1.3%と下落が続いた。生産財価格の上昇が生活財価格に波及するにはタイムラグがあるとみられるが、供給過剰によるデフレ下にある中国では、最終製品への価格転嫁が難しくなる可能性がある。この場合は、消費者物価の上昇圧力はある程度抑制されるが、特に川下産業の企業業績の悪化→雇用・所得への悪影響という経路で消費に下押し圧力がかかることになろう。
◆中国国家統計局によると、2026年1月~3月の実質GDP成長率は5.0%となり、2025年10月~12月の4.5%から加速した。大和総研は4.5%成長を想定していたが、予想外の堅調となった。これを受けて、2026年の成長率見通しを従来の4.4%から4.5%に引き上げる。これは政府成長率目標である4.5%~5.0%の下限に相当する。ただし、不動産不況は継続し、消費には耐久消費財の需要先食い政策の反動が懸念されるなど、内需は厳しい状況が続いている。今後、中東情勢の緊迫がさらに長期化すれば、世界経済が減速し、中国からの輸出品に対する需要も減退する可能性が高くなる。輸入は、原油や関連製品の価格高騰によって増加し、貿易黒字は縮小する可能性が高い。2026年の数少ない好材料とみられていた純輸出の寄与度が低下し、景気下振れリスクが高まることに注意が必要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:堅調スタートも持続性には疑問符
不動産不況、需要先食いのツケ、中東情勢緊迫化
2026年03月24日
-
中国経済見通し:2026年の全人代の注目点
2026年の政府成長率目標は前年比4.5%~5.0%に設定か
2026年02月24日
-
中国:今後10年の長期経済見通し
第15次5カ年計画の基本方針、山積する構造問題に処方箋を出せず
2026年01月21日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
中国:四中全会、関税、そして日中関係悪化
米関税下げで2026年の経済見通しを上方修正、ただし内需は厳しい
2025年11月25日
-
中国経済見通し:米中摩擦と厳しさ増す内需
固定資産投資は前年割れ。米中貿易戦争は再び激化?
2025年10月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:26年1Qは予想外の堅調で5%成長
ただし、中東情勢緊迫長期化なら政府目標4.5%~5%成長は困難に
2026年04月17日
-
中国:堅調スタートも持続性には疑問符
不動産不況、需要先食いのツケ、中東情勢緊迫化
2026年03月24日
-
中国:第15次5カ年計画を読み解く
成長率目標は設定されず。数値目標は安全保障の優先度上昇を示唆
2026年03月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

