サマリー
◆米国と中国の貿易をめぐる対立が再び深まり、両国間で激しい応酬が繰り広げられた。2025年10月10日、米国のトランプ大統領は中国からの輸入に対して、11月1日より、従来の追加関税をベースにさらに100%上乗せするとした。累計では130%に達する計算だ。仮に、これが実現した場合、中国の実質GDPは2.90%下押しされる。現行の30%追加関税では1.10%の下押しであり、さらに1.80%pt追加的に下振れすることが示唆される。しかし、大和総研は130%の追加関税は現実的ではなく、早晩、落としどころを探る展開になると想定している。累計145%の追加関税が一気に30%に引き下げられた5月の米中合意の背景には、米国側のレアアースの在庫払底懸念があったとされるが、レアアースをめぐる状況は当時と全く変わっていない。
◆中国国家統計局によると、2025年7月~9月の実質GDP成長率は前年同期比4.8%(以下、変化率は前年比、前年同期比)に減速した。ただし、1月~9月の実質成長率は5.2%となり、10月~12月に4.4%程度への減速を見込んでも、2025年の政府成長率目標である実質5%前後は達成できる可能性が高い。2026年については、①不動産不況が続いていること、②自動車・家電の買い替え促進策の効果が一巡し、特にNEV(新エネルギー車)については、車両購入税免税措置が終了し、その反動減が懸念されること、③「トランプ関税2.0」の先行きは依然として不透明であること、などから中国経済は減速を余儀なくされよう。大和総研では、2025年の実質GDP成長率は4.9%程度、2026年は4.2%程度になると予想している。
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