2026年06月01日
サマリー
◆「データサイエンスで紐解く健康経営」シリーズ第3弾となる本稿では、健康経営度調査の総合偏差値と企業の財務・人事・ESG関連指標の関係を、上場企業の公開データを用いて分析した。
◆分析にあたっては、業種や企業規模、経営体制・社風といった時間を通じて変わりにくい個社固有の要因をコントロールできる固定効果モデルを採用し、同じ企業の中で健康経営に関する取り組み度合い(総合偏差値)と翌年の業績等との関連性について検証した。さらに、健康経営の推進や情報開示に対応できる専門部署・人員・予算を備えた企業ほどデータに含まれやすいという偏り(サンプルセレクションバイアス)を踏まえ、この偏りを統計的に補正しても結論が変わらないかを確認した。
◆分析の結果、労務管理スコアに加えて、生産性や収益性(ROA)に関しては、偏差値が上がった翌年に改善が確認され、この関係は、偏差値公開企業の偏りを補正しても維持された。一方、PBRや時価総額といった市場評価への波及に関しては、今回のデータ分析では統計的に有意な結果は確認できなかった。
◆今後の課題としては、健康経営の中長期的な効果をより精緻に捉えるための時間的なラグを考慮した検証や、偏差値を開示していない企業も含めた健康経営度調査の個票データを用いたより頑健で、多角的な検証などが挙げられる。そのためには、さらなるデータの蓄積や個票データの使用許諾が必要となる。
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