2026年02月18日
「2025年版中小企業白書(※1)」では、2024年度は30年ぶりとなる「金利のある世界」の到来や、円安・物価高の継続、そして構造的な人手不足という、中小企業にとって厳しい経営環境が浮き彫りにされている。同白書によれば、大企業と中小企業の利益水準や賃上げ余力等の「格差」は拡大傾向にあり、従来のコストカット戦略が限界を迎える中で、成長型経済への転換に向けた付加価値の拡大や労働生産性の改善といった「経営力」の向上が重要とされている。
私は中小企業診断士として、中小企業の経営診断や具体的な施策立案を行う研究会等に参加している。そうした活動を通じて、同白書が示す「格差」の裏側にある本質に気づかされる。それは、成長型経済への転換に向けて取り組むべき経営のポイントには、企業規模による大きな違いはないということである。
一般的に、大企業は中小企業に比べてヒト、モノ、カネ、情報といった経営リソースが豊富である。しかし、その豊富なリソースが必ずしも最適に活用されているわけではない。現場ではリソースが十分に機能していなかったり、特定の分野で深刻な不足が生じていたりする。例えば、建設、物流、飲食などの労働集約型産業においては、企業規模に関わらず、外国人労働者が増加する中での現場オペレーションの変革や、専門人材をはじめとする人手の確保が課題となっている。リソースの「量」には違いがあるものの、それをいかに最適化して現場の実行力にまで落とし込むか、という経営課題の本質は共通している。
一方で、私が当社で担当しているのは大企業向けを中心とするM&Aアドバイザリー業務である。この業務においては、対象企業の価値やリスクを正しく認識し、評価することが求められる。M&Aにおける各種デューデリジェンスの支援や経営統合後(PMI)のシナジー検討において、中小企業の総合診断や具体的な改善策を検討してきた経験は有効な知見となっている。また、大企業の再編戦略でも、中小企業向け経営支援で直面する「現場レベルの課題解決」が成否を分けることが多いと感じている。
企業の規模はあくまで一つの属性に過ぎない。重要なのは、「自社の置かれた環境を正確に把握し、限られたリソースをいかに最適化して、現場レベルの課題解決に結びつけるか」という経営力の向上である。今後も、中小企業支援とM&Aアドバイザリーという両者の活動を通じて、企業の規模を問わず、それぞれの変革を支えるサービスを提供していきたい。
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- 執筆者紹介
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コーポレート・アドバイザリー部
主任コンサルタント 石本 正敬

