参院選を前に知っておきたい!政権支持率の正しい見方
2025年04月25日
2025年7月の任期満了に伴う参議院議員選挙(参院選)を見据え、政界では既に動きが活発化している。参院選を前に、改めて政権支持率の見方について整理しておこう。
まず、現内閣の存続に関する判断基準が二つある。一つ目は、「内閣支持率+政党支持率」が50%を下回ると内閣の運営が厳しくなるとされる「青木の法則(青木率)」だ。これは参議院のドンと呼ばれた故・青木幹雄氏が提唱したもので、経験則として一定の説得力がある。2025年3月の調査では、朝日新聞(49%)と毎日新聞(42%)が50%割れを示していたが、日本経済新聞・読売新聞・NHKなどの調査では低下傾向ながらも50%超を維持している状況だ。
二つ目は、現総理の「選挙の顔」としての評価基準で、「内閣支持率-政党支持率」の符号に注目するものだ。通常はプラスであり、政党支持率以上に内閣支持率が高い状態が自然である。一方、マイナスに転じると、現内閣が政党人気の重荷となることを意味する。選挙に臨む議員にとっては、現総理のままだと自分が議席を失う可能性が高まるため、「選挙の顔」を交代させる党内政局の機運が高まりやすい。
過去の例では、安倍晋三内閣はこの値が初めてマイナスとなった2020年8月に退陣し、菅義偉内閣も2021年7月にマイナスに転じると、選挙前に退陣した(いずれもNHK調査)。一方、石破茂内閣については直近4月のNHK調査で、この値が+5.3%pt(内閣支持率35%-政党支持率29.7%)とプラスを維持しているので、危険信号はまだ点灯していない状況だろう。
次に、支持率調査におけるバイアス(情報の偏り)についても理解しておきたい。特に調査手法に起因するものが重要だ。日本経済新聞や読売新聞が採用している「重ね聞き」という手法は、「わからない」と回答した人に対し、「どちらかというと支持するかしないか」を重ねて聞く手法だ。そのため、「わからない」の割合が減り、支持率も不支持率も上振れしやすい傾向にある。政党支持率も同様で「あえて選ぶとしたら、どの党に投票しますか」と重ねて聞くため、各党の支持割合が上振れしやすい傾向にある。このように報道機関によって調査手法には違いがあることから、各種調査における支持率の絶対水準は別物だとわかるだろう。
そこで、絶対値を判断基準にする「青木の法則」を用いる際には、複数の調査に目配りする必要がある。一方、「選挙の顔」としての評価は内閣支持率と政党支持率の相対的な大小関係に着目しているので、どの調査でも一定の判断基準として活用しやすい。
参院選を前に政権支持率の見方を整理した。「青木の法則」や「選挙の顔」といった判断基準に加え、調査手法のバイアスも考慮し、多角的な分析が必要である。
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経済調査部
シニアエコノミスト 吉田 亮平