トランプ大統領仲介のイースター停戦への期待 -「War Is Over」は届くのか-
2025年03月28日
筆者は長年、モスクワの銀行で働く友人に日本からクリスマスカードを送り続けてきた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻勃発後は「制裁対象」という理由により毎年通関で差し戻される状況に直面している。ロシアにはクリスマスカードすら届かない現実が、この戦争の深刻さを物語っている。
ブルームバーグの報道によると、トランプ政権が2025年4月20日のイースターまでの停戦合意実現に向けて動いているという。この日は西方教会(カトリック、プロテスタント)と東方正教会(ロシア正教)の祝祭日(イースター)が重なる珍しい年であり、同時にトランプ政権発足から約90日という節目にも当たる。トランプ政権は就任100日以内での停戦合意を掲げており、4月20日はその目標達成のための理想的なタイミングとなる。
ただし、ウクライナとロシアの立場の隔たりが大きく、現実的な妥協点を見出せないため、停戦合意がイースター以降にずれ込む可能性も高い。トランプ政権が停戦実現に積極的な姿勢を示す一方で、ロシア・ウクライナの両国間の激しい武力衝突が続き、互いへの非難も止まない状況が続いていることも確かだ。また、現時点での数々の声明からは、米国側にも本格的な和平プロセスへの準備が整っているとは見えない。米国はウクライナに対して強制的に停戦を求める影響力を持つが、その決意があるかも不透明である。
一方、興味深いのは、両国ともトランプ大統領の和平努力を公然と否定してはいない点である。その代わりに、両国ともに停戦実現の障壁が相手方にあることを非難し、巧みな外交戦術でトランプ政権の支持を自国側に取り付けようと駆け引きを続けている。ただし、西側諸国内部の亀裂も深まっており、欧州のすべての指導者がトランプ大統領の和平構想を支持しているわけではない。交渉が空転し期待が裏切られれば、和平プロセスは急速に悪化する可能性すらある。今後もサウジアラビアで続くと見られている和平協議は、双方が真に紛争終結に向けて動く意思があるのか、それとも単なる時間稼ぎなのかを明らかにする試金石となるだろう。
こうした政治的駆け引きとは対照的に、ロシア、ウクライナ両国の一般市民は戦争の長期化に心底疲弊しており、同じ東スラブのルーツを持つ民族間の痛ましい争いに終止符を打つことを切に望んでいる。トランプ大統領の仲介が真に実を結ぶためには、欧州諸国およびロシア・ウクライナ双方が目先の政治的利益を超え、勝者も敗者もない形での紛争解決を実現すべきである。
言うまでもなく筆者は、この悲劇的な対立が速やかに終息することを心の底から願っている。今年こそ「戦争は終わった(War Is Over)、ハッピークリスマス」と書いたカードがモスクワの友人に無事届く、そんなクリスマスを迎えられることを切に祈らずにはいられない。
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