サマリー
◆トランプ関税への反発から、世界で「米国抜きの連携」を模索する動きが強まっている。しかし、過度な「米国外し」は関税による「制裁」の対象となりやすい。そのような中、「反米色」を抑えながら自由貿易を堅持する動きとして有力なのが、CPTPP(包括的・先進的環太平洋経済連携協定)の拡大である。本稿では、CPTPPのEU拡大とそれにおける日本の役割、さらに、EU経済とメガEPAによって連結することでアジア圏が享受し得る恩恵について、ASEANの視点からまとめた。
◆CPTPPの前身であるTPPは、「中国包囲網」として米国主導で議論されてきた枠組みである。米国が交渉を離脱した後も、残された11カ国は米国が主張してきた項目を維持し、米国の将来的な復帰余地を残した。今後は、新規加盟申請国が増える中でも、これまで維持してきた高水準なルールを徹底することで、自由貿易の理念が損なわれる事態を回避すべきだ。その点で、「ルールに基づく自由貿易の拡大」という価値観を共有する、EUをCPTPPに巻き込む意義は大きい。
◆今後、CPTPPの拡大によってEUとアジア圏経済が連結すれば、ASEANからのEU向け電子機器輸出の増加等が期待できる。また、在欧州日系企業への調査では、部品や加工品などの中間財輸入元を中国からASEANに転換する動きもみられており、その点でもCPTPP拡大の効果は大きいだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
カシミール問題を巡る印パの内情と経済への影響
インドは米国の介入を快く思わないが、経済にとっては都合が良い
2025年05月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日