中小企業の更なるM&A促進には環境整備が急務

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2025年02月07日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 坂本 隼一

2024年1月1日16時10分、最大震度7を観測した能登半島地震が発生し、能登地域を中心に甚大な被害をもたらした。筆者の帰省先である富山県でも液状化による被害等が発生し、今もなお復旧の目途は立っていない。

東京商工リサーチの調査によれば、石川県の2024年における倒産件数は85件で、2023年の51件から66.7%増加している。これは全国平均の15.1%増と比べ、大幅な増加である。また、レコフデータの調査によれば、石川県の2024年におけるM&A件数は49件で、2023年の34件から44.1%増加し、全国平均(21.0%増)と比べて大きな伸びを見せている。能登半島地震による影響で、倒産件数・M&A件数ともに大きく伸びたものと思われる。

全国の状況に目を移すと、2024年は43都道府県でM&A件数が前年より増加しており(表1)、事業継続の選択肢としてM&Aが徐々に浸透してきていることが窺える。一方で、中小企業庁が作成した2024年6月28日付「事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について」(※1)では、後継者未定等の企業がM&Aを検討しない理由は、「M&Aに対して良いイメージを持っていない」が26.5%、「M&Aがよくわからない」が10.6%、「どこに相談したらよいかわからない」が9.2%と示している。実際に筆者がお会いする中小企業の経営者からも、同様の話を伺うことがある。M&Aを活用して事業継続可能な企業が、M&Aを正しく理解せずに事業を休廃業させるような事態に陥ることは避けるべきであろう。M&A活用を促し事業継続に繋げて一層の成長を図るためには、M&Aに対するネガティブなイメージを払拭し、M&Aという選択肢をとりやすい環境を整備することが必要である。

中小企業庁は事業承継・M&Aに関する今後の取組の方向性として、「事業承継・M&Aの更なる促進」のみならず、「M&Aの環境整備」や「事業承継・M&Aを契機とした成長支援」も打ち出している。本年1月24日には、中小M&Aガイドラインに違反したM&A支援機関の登録が初めて取り消されており、M&A支援者に対する信頼の確保や質の向上は急務である。また、経営革新等に必要なM&A後の設備投資等支援やPMI(Post Merger Integration)の促進等の成長支援によってM&Aの成功事例が増加すれば、イメージも自ずと改善されるだろう。筆者もM&A支援者の一人として、地域経済活性化の一助となれるよう微力を尽くしていきたい。

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坂本 隼一
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