社債を「貯蓄から投資へ」の架け橋に
2025年01月29日
堅調な株式市場やNISA制度の改正(所謂、「新NISA」)も相まって、ようやく「貯蓄から投資へ」が動きだした感がある。「貯蓄から投資へ」とのお題目は、一般的には貯蓄(預金)を株式投資へ移す意で唱えられている。しかし、預金をいきなり株式投資に移すことは一筋縄ではいかない。長年それを目指して努力しながら、なかなか実現してこなかった現実がその難しさを物語る。それよりは、預金をまずは社債投資に移す方が理に適っていると思うがいかがだろう。社債を「貯蓄から投資へ」の架け橋にしたい。
なぜなら、銀行など預金取扱機関に預金として集められた資金は、金融機関を通して現在も企業融資(社債と同様の金融商品)に使われているからだ。家計を含め投資家が持つ資金を、金融機関を通す間接金融(銀行ローン)ではなく、市場を通じた直接金融で社債投資に回すことはそう難しいことだとは思わない。例えて言えば、今まで卸を通していた販売ルートを、直販に変えるようなものである。
株式を上場し、しっかりと決算短信、有価証券報告書等で財務・非財務情報を公表している企業群であれば、もう銀行に情報生産機能(資金の借り手の信用リスクの審査)を委ねる必要などないだろう。なぜなら、社債より格段にリスクの高い株式を、個人投資家も含めた様々な投資家が、そうした情報をもとに売買している事実があるからだ。また、社債に投資をする投資家は、個人も含め十分にリスク負担能力もあると考えられるので、わざわざ銀行にリスク負担をお願いして、預金を銀行ローンに交換してもらう必要もないと考える。
日本の場合、株式投資に良い印象を持たない人も残念ながらまだまだ多いように思われる。よって、日本人の投資性向からもローリスク・ローリターンの預金をハイリスク・ハイリターンの株式に一足飛びに移行するのは容易ではないと考えられる。まずはミドルリスク・ミドルリターンの社債に投資対象を移すこと(つまり社債を架け橋にすること)を考える方が得策ではないだろうか。その意味では、新NISAの投資対象を株式に加えて社債などに広げることや、株式投資に偏重しがちな現在の金融経済教育に債券投資の肝である金利概念の教育を加え、社債投資のウェイトが高まっていくことを切に期待したいものである。
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