令和の体育会組織
2024年11月15日
主人公が悩みながら試練を乗り越え成長していく「スポーツ根性もの(通称:スポ根)」を題材にしたアニメやドラマ・映画などは今も昔も人気だ。若者がスポ根ものを見て主人公に憧れ、スポーツを始めるケースも少なくはないだろう。厳しい指導と努力と忍耐を伴うスポ根の世界を「体育会組織」という言葉で表現することが多い。
日本では、多くの若者が中学・高校時代に部活動という形で「体育会組織」を経験する。この体育会組織では、スポーツの技術だけではなく、社会人生活で役立つ基本スキルが学べると考えられている。そのため、企業の人材採用場面などの人物評価を行う際に、体育会組織での経験はプラスに評価されることが多い。有名な企業経営者が若い頃の体育会組織での経験を美談として語ることも良くある話である。
今、体育会組織は転換期を迎えている。テレビドラマなどで「昭和と令和の価値観の違い」が面白おかしく描かれているが、「体育会組織」も認識が大きく変わり始めている。令和元年(2019年)に始まった新型コロナウイルスの蔓延は、この変化を加速したと考えられる。具体的には、厳しい上下関係や規律を重んじる風潮からよりフラットな関係にシフトした。令和では、厳しすぎる指導は、心の健康を損なう要因として不適切な指導となってしまい、厳しくすると皆辞めてしまう。体育会組織のコーチングスタイルも企業経営における「働き方改革」や「健康経営」などと同様に、令和スタイルへの変革が求められている。すなわち、「厳格な規律重視」から「個人の成長と健康、多様性重視」にシフトしていく必要がある。
令和の体育会組織で若者が良い体験をし、心身ともに健康的な生活を送ることができる環境づくりが急務となっている。AIやDX化などの時代の流れに伴い、体育会組織をよりクリエイティブな環境に発展させることもできるだろう。例えば、若者が自発的に「データ分析や勝つための戦略」を学ぶ場とすることもできるはずである。最後に、スポーツ振興は人材育成や生涯スポーツによる日本人全体の健康力の増強につながる重要な施策であり、中学生・高校生の体育会組織での経験はその根幹にある。令和の体育会組織を経験した若者が、将来の日本を変える人材になってくれることを期待したい。
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主任コンサルタント 耒本 一茂