地域活性化と気候変動対策

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2024年09月06日

  • コンサルティング企画部 田中 雄祐

日本では2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指し、各種戦略や計画が打ちだされている。中でも2022年に策定された「地域脱炭素ロードマップ」(※1)は、脱炭素を通じ、地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に貢献することを掲げている。2030年までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域の創出を目指しており、選定地域には、脱炭素モデルを伝播する「脱炭素ドミノ」の起点となることが期待されている。選定された地域が取り組む施策を類型で分類した割合を見ると、農林水産業振興・防災・資源循環といった社会インフラ整備に関する取り組みの多いことがわかる。

他方、京都市では「京都観光モデル」を掲げ、市民生活と観光の調和、災害などの危機や環境問題などに対応できる観光産業を目指した取り組みを進めている(※2)。オーバーツーリズムの問題を踏まえ、観光庁では各地方公共団体や観光地域づくり法人(※3)による適切な観光地経営の導入を通じて、地域社会における経済利益や旅行者・コミュニティ・文化資源・環境に対する利益の最大化、悪影響の最小化などにより「持続可能な観光先進国」を実現していくことを挙げている(※4)。

観光には移動がつきものであり、CO2排出を身近に感じられる。脱炭素をキーワードにした観光資源開発と地域の社会インフラ再整備を起点とし、地域と都市圏を結ぶ施策を展開することで、ヒト、モノ、カネのドミノを倒すことができるだろう。脱炭素先行地域第5期選定においても、民間事業者等との共同提案が必須とされ、選定地域の範囲を超えて、金融機関・中核企業、教育機関等を巻き込んだ、周辺地域の脱炭素を推進するための基盤構築が求められている(※5)。

この夏は気温がたった1.76℃(※6)上がっただけで、我々の生活が一変することを目の当たりにした。このまま、化石燃料に依存した経済活動が続いた場合、2100年には平均気温が4℃前後上昇するとされる(※7)。私たちの生活が激変しているであろうことは想像に難くない。
地域脱炭素ロードマップでは、「一人一人が主体となり今ある技術で取り組むこと」が挙げられている。8月に終了したオリンピックでは、「参加することに意義がある」というが、こと気候変動対策において、私たちは参加するだけではなく、成果を求めて積極的に取り組む必要があるのではないか。

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