カタカナ語の誘惑
2024年08月23日
カタカナ語の効用とは何だろうか。まず思い浮かぶのは、外国語の受容に役立つことである。日本になかった物品や新しい概念を輸入する時に、その名称をそのまま取り入れることができる。加えて、カタカナ語が持つ分かりやすさと特別感も効用として指摘できるだろう。
カタカナ語が分かりやすいというのは、画数が少なくシンプルな形をしていることと、表音文字なので読み間違える心配はない(だからこそフリガナに使われる)という点を念頭に置いている。カタカナ語の特別感については、カタカナで書いた言葉が、漢字で書いた言葉に比べて際立って見えるという視覚的な特徴のことを指す。言葉を強調したい場合にカギカッコをつけることがあるが、カタカナ語はそれだけでカギカッコ的な要素を持っているといえるだろう。
たとえば、サステナビリティ、コーポレート・ガバナンスといった言葉がある。サステナビリティは持続可能性、コーポレート・ガバナンスは企業統治と翻訳できる。日本で投資や消費といった経済活動や社会活動が持続可能性をまったく考慮してこなかったわけではなく、企業統治が存在していなかったわけでもない。
ただし、昨今のように「持続可能性」が喫緊の課題となっている状況下で、海外の動向も踏まえつつその重要性に注意をひきつけるためには、「サステナビリティ」という言葉を使った方が効果的と考えられる。また、投資家が投資判断をする際、その企業の統治がどうなっているかを非常に重視するようになってきたが、このことは「コーポレート・ガバナンス」という名称とそれに関連する法整備と共に、企業サイドに広く浸透した。
効用ばかりを並べてきたが、カタカナ語が常に分かりやすいとは限らない点には注意が必要である。中にはシステム、アドバイス、ニュースなどのようにすっかり日本語に定着し、カタカナを使わずに言い換えられる適当な言葉がすぐには浮かばないカタカナ語もある。しかし、もともとが外国語なので、意味を説明されないと分からないカタカナ語も少なくない。また、漢字表記よりも際立つという特徴は、カタカナ語が多用されている文章を読みにくくすることにもつながる。とりわけ文章を書く時に、カタカナ語の効用を踏まえた上で、効果的な使い方を工夫することが肝要であろう。
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