新たな、お三方をお迎えして
2024年07月10日
40年ぶりに一万円札の肖像が渋沢栄一に変わった。昭和、平成、令和の3時代にわたり、日本のバブル景気から、その後の崩壊を含む激動の時代を支えた福沢諭吉からのバトンタッチである。五千円札、千円札も20年ぶりにそれぞれ津田梅子、北里柴三郎に交代となった。キャッシュレス化が進み、現金を手にする機会が大分減ってきたが、久しぶりの新札発行を受けて、新札を早く拝みたいと感じるのは私だけではないであろう。
さて、今回発行される紙幣には、従来の7つの偽造防止技術(潜像模様、パールインキ、マイクロ文字、深凹版印刷、識別マーク、すき入れバーパターン、特殊発光インキ)に加え、新たに高精細すき入れ、3Dホログラムの2つの技術が採用された(国立印刷局 新しい日本銀行券特設サイト(※1))。
日頃使用している紙幣に、これほどまでに偽造防止技術が施されているとは、正直知らなかったが、使用している技術を日本銀行および国立印刷局が公表していることに驚きを覚えると共に、彼らの偽造防止技術への自信を感じた。特に3Dホログラムは、紙幣への採用は世界初とのことである。子供のころ、映画「スター・ウォーズ」シリーズで見たSFの世界がまさかお札の中で実現するとは想像もしなかった。3Dは言わずもがな、立体映像として視覚に捉えられるような仕組みであるが、今後は、視覚、触覚以外の他の五感で紙幣を識別する日も来るかもしれない。
視覚以外と言えば、昨年9月に明治大学 総合数理学部 宮下芳明教授と東京大学 中村裕美特任准教授が、イグ・ノーベル賞(栄養学)を受賞したのは、“電気味覚”である。電気刺激によって、「味を調整できる食器=エレキソルト」をキリンホールディングス(株)と共同開発し販売している。特に塩分摂取量を気にされている方にとっては、過剰な塩分摂取を防げることは、大変画期的なことであると思う。
人生100年時代と言われる昨今、健康的な生活を意識し実践している人は少なくないように思うが、老眼が進んだり、耳が遠くなったりと、五感の一部が経年で劣化することは残念ながら免れない。しかし、五感を補う技術開発が進み、誰でも利用できるような時代がくれば、バラ色の老後をデザインできると考えるのは早計であろうか?もっとも、日本が科学技術立国を目指すのであれば、そのくらいの妄想を抱いても許されるようにも思うのだが。
まずは、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎、どなたかの肖像の紙幣を手にしたら、回転させて自分の五感を刺激してみることとしよう。
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