若手の出向を考える
2024年06月28日
近年、日系企業に勤務している友人たちと会話をしていると若手(20代~30代前半)の出向が増えてきていると感じる。出向先は出向元との資本関係の有無を問わず、数年間出向先で勤務ののち出向元へ帰任するというケースをよく聞く。筆者もその一人であり、現在は大和総研で出向者として勤務しているが、出向元は大和総研と資本関係のない会社である。では、このような若手の出向制度にはどのようなメリットがあるのか。自身の経験を基に、出向者の視点から考えてみたい。大きく分けると、(1)人脈構築、(2)スキルアップ、(3)新たな企業風土の体験がメリットだと考える。
(1)については、出向先での業務を通じ、出向先の社員や出向先のクライアント等との繋がりができると考えられる。
帰任後の業務において、出向先・出向先のクライアントがカウンターパートとなる場合、一度関係性を構築していることは円滑に業務を進めることの手助けになるだろう。直接的なカウンターパートとならない場合であっても、可能な限り帰任後も継続して情報交換を行っておくことで、新たなビジネスチャンスに繋がることもあると思われる。
(2)については、出向先での業務を通じて新たな知識を吸収し、スキルアップを図ることができるだろう。
出向先と出向元では業務上なんらかの関係性があることが多いと思われるが、帰任先が出向先と業務上関わる部署であれば出向先で培った知識を直接的に活かせることとなる。仮に帰任先が出向先で得た知識が直接的に活かせない部署であったとしても、知識というのはどこで役にたつかわからないものだ。知識の点と点がいずれ線になる時が現れるかもしれない。さらに、日系企業はジョブローテーションを行うことが多いので、いずれは出向先と業務上関わる部署に異動になる可能性も十分にある。
(3)については、企業が異なれば業務内容・働き方の違いを感じると思うが、実体験を通じて新たな企業風土を知ることができる。
出向という制度を使い、別業態・企業で働く数年間は実質的に転職しているようなものだ。(当然ながら出向元にとっては望ましくないことであるが)出向先の業態・企業が自分の今後のキャリアに合うと考えるのであれば、転職活動に踏み切るのも良い。出向先での勤務を経験して、やはり出向元の業態・企業やその文化が自分のキャリアに合うと認識できたのであれば、帰任後も出向元で継続して働けば良いのである。
ある意味リスクなくほかの業態・企業を経験できる出向期間は、改めて自分のキャリアを見つめなおす良いきっかけである。
メリットだけではなくもちろんデメリットもあるかと思うが、出向制度を経験できたのは非常に良いことであった。所属している会社に出向制度がある若手の方は、出向の希望について一度考えてみてはいかがだろうか。
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