新NISAの「裏技?」のような制度と「国内投資枠」新設の提案

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2024年02月14日

2024年1月に始まった新しい少額投資非課税制度(新NISA)は、これまでの証券口座の開設件数やNISA口座を通じた買付動向を見る限り、幸先のよいスタートを切ったといえる。こうした中、本コラムでは、新NISAに関して、①あまり知られていない裏技のような制度、②今後の新たな投資枠という案、という少しニッチな話題を取り上げたい。

まず、企業等で働いている勤労者の中には「職場つみたてNISA」と呼ばれる、通常より金銭的メリットを享受できる裏技のような制度を使える人たちがいる。この制度を利用すると、新NISAの「つみたて投資枠」で毎月投資する際に勤務先から数%の補助を受けることができる。昨年末に終了した「つみたてNISA」でも利用可能であったが、実際に導入している職場が少ない影響なのか、あまり注目されてこなかった。

具体的に5%補助されるケースを考えよう。毎月約10万円(99,750円=自己資金95,000円+5%の補助4,750円)ずつ15年間積み立てる場合について単純に計算すると、補助額の合計は約90万円(85.5万円)と結構な金額になる。もし、「職場つみたてNISA」が利用可能であれば、ぜひ前向きに検討したい。

次に、新NISAでは、米国株や全世界株の指数に連動するインデックス投資信託の人気の高さを背景に、家計資金の海外流出が注目材料となっている。国際分散投資という観点からは、個人が海外株式にも幅広く投資するのは当然のことだといえる。しかし、家計資金を国内の成長分野に供給して日本経済の成長や資産所得の増加につなげようという、政府が目指す成長と分配の好循環の姿とは大きく異なる。

今後、家計資金の海外流出の拡大などが国内で大きく問題視される事態となれば、新NISAの制度を修正すべきという意見が浮上することも想定される。たしかに、国内の成長と分配の好循環という視点に立てば、新NISAを通じて、家計資金が国内の成長分野にしっかり供給されるような仕組みづくりも大切だ。この点に関して、あくまで個人的なアイデアとなるが、将来的に、現在の「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に加えて、新たに「国内投資枠」を設定するという案が考えられる。

日本がデフレから脱却して安定的なインフレ環境が実現できれば、老後の生活費は年々増加していくことから、将来的に新NISAで投資できる額を拡大させることには一定の合理性がある。その際、新たな枠を設けて、国内の個別株や日本株のインデックス投資信託に限定する。政府にとっては、ただ単に既存の枠を拡大させるより、国内の成長分野に資金を供給しやすくなるというメリットが期待される。個人投資家にとっても、既存の枠をあとから修正されるより、新たな枠を設けてもらった方が対応しやすい面もある。

ここまで、新NISAのあまり注目されていない内容について、やや思うがままに述べてきたが、これから新NISAを始めようという人は、具体的な活用方法について取り上げている下記の拙稿にも目を通していただければ幸いだ。

(参考)長内智(2024)「新NISA 二つの盲点」、『週刊エコノミスト』(2024年1月16日号)、毎日新聞出版、pp.32-34。長内智(2024)「新NISA活用のためのQ&A10~利用開始から金融商品の選び方まで」、『税務弘報』(2024年2月号)、中央経済社、pp.133-140。

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長内 智
執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 長内 智