2023年08月02日
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した「将来推計人口」によれば、我が国の人口は2020年の1億2615万人から2070年には3割減少し、8700万人程度になるそうだ。とりわけ、日本の国力に影響しそうな「生産年齢人口(15~64歳)」は、2020年の7509万人から2070年に4535万人へ、3000万人減少すると推計している。個人的に非常にショッキングなニュースであった。
日本の人口推移を歴史的にみると、江戸幕府が成立した1603年に1200万人を超え、江戸時代前期に急激に増加。江戸時代後期から明治維新(1868年)にかけて3000万人台と停滞したが、その後に急増し、太平洋戦争終戦時(1945年)に7200万人。今回公表された8700万人は、終戦から5~10年後の人口にあたるが、その間の生産年齢人口は5000~5500万人で推移している。
こういった人口推計をみると、日本の行く末に対して悲観的にならざるを得ない。世の中、サステナビリティが謳われて久しいが、果たして、持続的な社会は実現可能なのだろうか。
世界に目を向けると、現在の人口は約80億人。2022年の国連推計によれば、22世紀に概ね100億人に達するらしい。地域的には、アフリカや南アジアが人口増を牽引する。先進諸国においても、米国、豪州等の人口は、2050年さらには2100年と長期的に増加する予測になっている。一方で、中国、韓国、ドイツ等は日本と同様に減少予想となっており、国ごとの格差がはっきり出てくる。
なぜ、米国や豪州で人口が増えていくのか。ひとえに、外国人を受け入れているからだ。例えば、豪州では、移民(海外で生まれた者、または、両親のどちらかが海外で生まれた者)の総人口に占める割合が5割を超えている。
我が国においても、自民党をはじめ、各党こぞって少子化対策を力説している。是非とも子供を安心して育てられる環境づくりに、あらゆる支援を実行して欲しいものだ。
私は、若い世代が結婚して子供を育てるためには、まずは、大都市圏に人口が極端に集中する構造を改革すべきと考える。例えば、バブル期以降続いてきた、「大企業に就職し、結婚と共に本社への通勤圏にマイホームを持ち、生まれた子供はお受験を経て有名私立へ通わせる」を“サクセス・ストーリー”にすると、多くのビジネスパーソンは結婚して子供を育てることを大いなるリスクと捉えてしまう。それくらい、大都市圏への過度な集中は経済的負荷を強いている。もっと多様なライフスタイルを選択できる世の中にすべきだろう。この点はマスコミの影響力に期待したいところである。
加えて、日本人は外国人労働力の活用に苦手意識を抱く傾向にあるが、外国人にとって魅力のある労働環境を整備し、積極的に受け入れることは避けて通れないと思う。さらに、医療・エネルギー・モビリティ等あらゆる分野において、異次元のDX推進により世界を先導するレベルまで引き上げること。これは、人口減を補う施策として産学官連携により強力に推進して欲しい。
とかく日本人はフレームが確立できないと具体的な行動を起こせないところがあるが、ひとたび方向性が決まれば、愚直に邁進するチカラを備えている。そろそろ、日本のサステナビリティを実現するため真剣に「人口減少に抗う施策」を考える時期にきているのではないだろうか。
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コーポレート・アドバイザリー部
主席コンサルタント 橋本 直彦
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