2次補正がもたらす財政上のツケ

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2022年12月23日

2022年12月2日、令和4年度補正予算(第2号)(以下、2次補正)が国会で成立した。総合経済対策の財政上の裏付けとなるものだ。だが近年は、当初予算・補正予算にかかわらず、多額の財源を国債に依存する状況が続いており、財政の持続可能性を懸念する見方がある。

米国では、新規の法案が発議されると、独立財政機関である議会予算局が10年程度の財政への影響を推計している。それに倣って2次補正が今後10年間(2022~31年度)に財政に与える影響を簡単に試算してみよう。財政の持続可能性に関連する指標として、①基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)、②国債利払費、③政府債務残高(名目GDP比)に注目したい(※1)。

まず、PBへの影響はどうか。PBは、ある年度の行政サービスを提供するための経費を、同じ年度の税収等で賄えているかどうかを示す。2次補正では、PBの対象となる歳出は29.2兆円程度(総合経済対策のための経費など)、歳入(当初予算から税収が上振れする分など)は3.8兆円程度であるため、2022年度のPBは25.4兆円程度赤字幅が拡大する。なお補正予算は当年度の歳出・歳入を修正するものであるから、次年度以降のPBには基本的に影響を与えない。

続いて、国債利払費は10年間でどのくらい増えるだろうか。2次補正によって22.9兆円の新規国債が増発されるので、その分の利払費が増える。足元の金利は日銀によって低く抑制されているが、インフレが続けば金融緩和が修正される可能性がある。金利動向にもよるが、2031年度にかけて長期金利が0.8~2.8%に上昇すると想定した場合、利払費は2031年度までの累積で0.8~1.2兆円程度増加するとみられる。

最後に、10年後の政府債務残高(名目GDP比)にはどういう影響があるだろうか。分子と分母に分けて考えてみよう。分子の政府債務残高は、2022年度のPB赤字拡大や今後10年の利払費増によって増える(ただし剰余金の活用等によってある程度抑制される)。一方で分母の名目GDPだが、10年後には総合経済対策の景気刺激効果はほとんど残っていないだろう。だが経済が自然体で成長するだけでも名目GDPは10年後には拡大していると予想されるため、政府債務残高(名目GDP比)を押し下げる効果を持つ。総じてみると、10年後の政府債務(名目GDP比)は、2次補正がなかった場合と比べて3~4%pt程度上昇すると推計される。

もっともここでの試算では、経済対策による景気刺激効果で一時的に税収が増えたり、中長期的にも潜在成長力が引き上げられて名目GDPがさらに拡大したりする効果は考慮していない。だがその効果を考慮しても、財政状況については総じて悪化する可能性が高いだろう。

足元では海外経済が下振れするリスクが強まっており、2次補正には国民生活を守り経済成長を促す効果が期待される。だが財政への目配りも重要である。経済対策を行う際には、国会やマスメディアも含め、財政への影響をもっと議論してもよいように思われる。

(※1)試算手法・前提等の詳細は、末吉孝行「インフレと金利上昇で財政はどうなるか 政府債務の名目GDP比は短期的に低下するが、将来の利払費は急増」(大和総研レポート、2022年12月9日)を参照。

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執筆者紹介

経済調査部

シニアエコノミスト 末吉 孝行