アフターコロナにおけるサステナビリティ開示
2022年12月16日
2019年12月に起こった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大はまだまだ予断は許さないものの、ようやく従来の日常生活を取り戻しつつある。一方で、日本においては現在も引き続きマスク着用が習慣化していることや、失業期間の長期化・求職者数の高止まりといった雇用の課題がより顕在化してくるなど、コロナ禍が残した爪痕はまだしばらく尾を引きそうに思われる。
ビジネスの側面からは、コロナ禍をきっかけに加速した新しい働き方として、多くの企業でテレワーク(在宅勤務制度)が積極的に導入され、顧客や取引先とのウェブ会議が浸透する等の変化が起きたことが挙げられよう。これまでの対面を重視した顧客との付き合い方、社内外を含めた他者とのコミュニケーションや、顔が見えない中での社員の人事評価等についても、従来の「常識」に変化が起きているといえる。テレワーク導入をさらに加速する企業もあれば、オフィス回帰を宣言する企業も増えるなど、企業のスタンスは大きく分かれているように感じる。この意味において、今回のコロナ禍は、企業にとって、もしくはそこに勤める社員自身にとって、どのような働き方が望ましいか、企業はどうあるべきかを思考、模索する機会を与えるきっかけとなったといっても過言ではない。
そのような中、金融庁は2022年11月7日に、サステナビリティ情報等の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表した。有価証券報告書の提出会社(約4000社)は、早ければ2023年3月期に係る有価証券報告書から、サステナビリティに関する考え方及び取組みに関する開示が求められることとなる。具体的には、ガバナンス(サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続)及びリスク管理(サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、及び管理するための過程)が必須の記載事項とされる。加えて、人的資本に関する戦略等について、人材育成に関する方針や社内環境整備に関する方針、当該方針に関する指標の内容、当該指標を用いた目標及び実績の開示などを求めている。
適用初年度となる2023年3月期では、比較的開示しやすい項目からスタートすることで、企業側の負担を配慮するものとなっている。サステナビリティに関する開示は、既にコーポレートガバナンス報告書において先行して開示がなされているが、やはり有価証券報告書での開示は重みが違うように思う。開示のスタート段階では、企業側が虚偽記載を避けようとする意識から、とりあえず他社の動向をうかがいつつ、通り一遍の無難な記載(開示)にとどめておこうという意識が働きやすいかもしれない。しかし、むしろ積極的な人的資本への投資・人材育成を進める企業では、より自社のビジョン・組織風土をアピールすべく、踏み込んだ開示を行う機会ともなろう。今回の開示府令の改正が、単なる開示義務事項の追加改正にとどまらず、あるべき企業像、またそこで働く社員にとって望ましい組織に進化していくためのきっかけになることに期待したい。
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- 執筆者紹介
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コーポレート・アドバイザリー部
主席コンサルタント 吉田 信之
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