キラキラネームに物申す!?

~日本の文字文化の行く末を憂う~

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2022年07月11日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主席コンサルタント 橋本 直彦

今年5月17日に法制審議会の戸籍法部会が中間試案を公表した。戸籍の氏名に“読みがな”をつけることに加え、いわゆる「キラキラネーム」をどこまで許容するかがメディアで話題になった。「海」を「マリン」、「光宙」を「ピカチュウ」と読むことは認められる可能性が高いとの報道もあり、個人的には、驚きと共に日本の文字文化の行く末に少々不安を覚えてしまった。

親が子の名前をつける行為は、子を授かった喜びや子供の健康な成長を願う親の思いであふれている。私にも二人の娘がいるが、名前をつける際はワクワクしながらも、子供の将来に思いを巡らせ、親としての責任の重さ感じながら、妻とあれこれ相談したことを思い出す。もっとも、世の中、恵まれた環境で生を受けるケースばかりではない。貧困や紛争地域で生まれる子供たちは、名前よりも明日のミルクが大切なことは承知している。忘れてはならないのは、出生という事実が、万国共通に尊いものだということだ。

最近、日本では、キラキラネームと称して、およそ常識では判読できない名前が増えている。それらすべてを否定するつもりは無いが、子供の名前を流行に任せてつけたり、文字本来の意味や読み方から大きく逸脱したりすることが、果たして認められるのか、議論の余地があろう。

ところで、漢字を使わない諸外国にもキラキラネームは存在するのだろうか?例えば、Hammond Eggsでham and eggs「ハムと卵」、Jo King で joking「ジョーク」といった具合に音遊びのような氏名は存在するらしい。また、少し前に話題になったが、イーロン・マスク氏は子供に「X Æ A-12」と名付けたという。もはや、私のような凡人には言葉も無い。

そもそも、今回の法制審議会の動きには、行政手続のデジタル化において、障害となりうる戸籍上の氏名の“漢字のみの表記”を改め、“読みがな”をつけることに狙いがある。すなわち、多様化する氏名の読み方をどこまで許容するかを考える中で、キラキラネームが議論されているのだ。中間試案には、「権利の乱用がなく公序良俗に反しない範囲で認める案」や、「音読み・訓読み、慣用による読み方や漢字の意味と関連性が認められるものとする案」などが掲載されている。6月27日でパブリック・コメントが締め切られ、さらに検討が深まっていくことだろう。

若い世代の感覚からすれば、少々古臭い考えかもしれないが、我々は、日本人として、漢字の成り立ちや文字文化に対して敬意を払いつつ、時代と共に変化する常識からも目を逸らしてはいけないと思う。そして、何よりも、名前とは、自分の意思が働かないところで決まり、多くの場合一生つき合っていく「呼び名」であることを真摯に考えるべきではないだろうか。

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橋本 直彦
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