2021年12月22日
11月に欧州と中国が「コモン・グラウンド・タクソノミー」と題した報告書を発表した。タクソノミーとは経済活動が持続可能なものであるかどうか、つまりグリーンなものであるかどうかを分類する体系である。分類を行う目的は、グリーンな経済活動へ世界中から投資資金を呼び込み、経済成長を実現することにある。
EUはタクソノミーの策定で世界の先頭を走っているが、意外なことに、中国もタクソノミーを作っており、世界ではこの2つのタクソノミーが模範になっている。ただし、それぞれのタクソノミーにはその目的や分類方法などに違いがあり、将来的に投資家が混乱してしまう事態が懸念されていた。
11月に公表された欧州と中国のコモン・グラウンド・タクソノミーは、2つのタクソノミーの比較を可能にして、将来は共通性を高めていくための最初の試みとされている。図の左側はEUのタクソノミーの概要を示しているが、欧州は気候変動の「緩和」(温室効果ガスの排出削減対策)と気候変動への「適応」(治水などを行って気候変動による悪影響を低下させる対応)に分けてタクソノミーの目的を置いている。一方、図の右側にある中国は、環境の改善、気候変動への対応、資源利用の効率化にタクソノミーの目的を置いている。
報告書では、欧州の気候変動の緩和という目的にある経済活動と中国の気候変動への対応に即した経済活動について分析が行われている。具体的には6業種にまたがる80の経済活動が分析対象となった。例えば、再生可能エネルギーによる様々な発電事業などの経済活動が分析されている。欧州と中国は今後、分析業種を追加していく予定である。さらに、ブラウンからグリーンに移行する上で避けては通れないトランジションが必要な業種についても検討を加える計画にしている。
報告書には、コモン・グラウンド・タクソノミーが国際的なスタンダードであると言うつもりはないと書かれてあるが、両地域の経済規模や政治的な影響力を考えると、この基準が自ずとグローバルスタンダードとなっていってしまう可能性は低くない。中国は気候変動対策に後ろ向きであるという印象をお持ちの方も多いかもしれない。しかし、国際会議などでの中国の気候変動への取組みをみれば、中国はしたたかに気候変動対策を進めていると認識すべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
政策調査部
主任研究員 山崎 政昌
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米国:AI活用は続くが、「選別」も本格化へ
「選別」は過剰投資を抑制も、信用リスク・資産価格への波及に注意
2026年06月25日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 高市政権の成長戦略、骨太の方針で実質賃金は本当に増加するのか?
①時間あたり労働生産性の引き上げ、②1人あたり労働時間の増加、の2点が1人あたり実質賃金の増加に向けたカギ
2026年06月25日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第2部/全3部)
欧州4カ国と日本のデジタルID基盤・ウォレット構築の比較
2026年06月25日
-
主要国経済Outlook 2026年7月号(No.476)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年06月24日
-
米国:AIが変える人材需要—中堅・シニア優位も、その持続性は「?」
2026年06月24日

