日米に見られる隔年リズム、2022年はさえない?

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2021年11月24日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 佐藤 光

筆者の趣味のひとつにアメリカンフットボール観戦がある。例年秋から冬にかけてのアメフトシーズンには、本場米国のNFL(プロリーグ)はもちろん、国内も含む様々な試合を楽しんでいる。

アメフトでの最高峰は、NFLの年間チャンピオンを決めるスーパーボウルである。今年2月に行われた第55回スーパーボウルではタンパベイ・バッカニアーズが優勝したが、大きな話題となったのは、同チームのクォーターバック(攻撃の要のポジション)であるトム・ブレイディ選手が、個人として7回目のスーパーボウル制覇を成し遂げたことだ。これは他の追随を許さない偉業である。

ブレイディ選手の戦績にみられる興味深いリズムとして、最近4回のスーパーボウル制覇が隔年だったことが挙げられる(2015、2017、2019、2021年に優勝。その他3回は2002、2004、2005年)。競争の激しいNFLにおいてスーパーボウル連覇は極めて困難だが(これまで3連覇したチームはない)、個人とはいえ、きっちり隔年で優勝するというのも並外れている。

その隔年リズムに合わせたような動きとなっているのが、近年の日本の株価である。TOPIXの年次の騰落率を見ると、2015年以降で西暦が奇数の年は上昇率が大きく、偶数の年は相対的に小さい(図表参照)。今年は奇数の年のパターン通りに株価はこれまで大きく上昇しており、TOPIXは30年ぶりの2000ポイント台も記録した。この株価推移の背景のひとつとして考えられるのが、民間投資の動向である。民間総固定資本形成は2015年以降で伸び率が上げ下げを繰り返しており、奇数の年に好調でも偶数の年には減速していた。日本経済の成長の鈍さは度々指摘されるが、民間投資動向が示唆するように成長の持続性が乏しく、トレンドとして加速するような展開にまで至らないことが大きな課題といえる。

もうひとつの背景が対ドル為替レートの推移である。2015年以降でドル円レートが105円/ドルを下回る円高場面(日次終値ベース)は2016、2018、2020年に記録しており、やはり隔年だった。現在の日本経済は円安傾向がメリットになるとは限らないものの、急速な円高に対しては金融当局や市場の警戒感が高まりやすい。

少々気の早い話だが、これまでに紹介したリズムを踏襲すると、2022年はブレイディ選手のスーパーボウル8回目の制覇はならず、日本の株価や民間投資はさえない展開になり、為替の円高場面に注意が必要ということが想定される。しかし、コロナ禍という大波を人類が乗り越えつつあるいま、日米ともに隔年リズムを覆す動きが見られるかもしれない。まずは2022年2月の第56回スーパーボウルに向けての激しい戦いを堪能したい。

TOPIXと民間総固定資本形成

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