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パーパス思考——会社はなぜ存在するのか?

2021年09月14日

経営コンサルティング第一部 コンサルタント 青葉 亮

「会社はなぜ存在するのか?」——あまりに本質的な問いは、普段はあまり問われないが、近年、企業経営においてこうした問いかけの重要性が増している。企業の社会的な存在意義等と訳される「パーパス(purpose)」をめぐる潮流だ。

かつてミルトン・フリードマンは「企業の唯一の社会的責任(only one social responsibility)は利益の創出である」と主張し、この考えは、「半世紀にわたり、世界中の企業経営や政策立案を規定する強力なコンセプトだった」(※1)。しかし、今やその潮目が変わりつつある。

時価総額28兆円超を誇る米国Salesforce社の創業者マーク・ベニオフは、「(古い)資本主義は死んだ」と宣言。「OK, Friedman」と言わんばかりに、「確かに利益は重要。だがそれ以上に社会も重要」とし、パーパスを企業文化に統合する企業は競合をアウトパフォームすると指摘した(※2)。同じ頃、米国ビジネスラウンドテーブルが「企業パーパスに関する声明」を発表。「株主資本主義」の見直しが加速する契機となった【図表1】(※3)。

【図表1】

消費者のブランド選好にも変化が起きている。自身の愛好度(I love it)以上に、対象ブランドが信頼に値するか(I trust it)が重要視されるようになった。また、自己のライフスタイルとの合致といった〈“Me”の価値〉よりも、社会的価値や関係性といった〈“We”の価値〉に親和性を感じる消費者が多い【図表2】(※4)。

【図表2】

背景には、政治やメディアに対する不信感があるとされ、その空白を埋めるべく、今や企業は社会課題解決の旗手として期待されている【図表3】(※5)。

【図表3】

さらに、「永遠の経済成長というおとぎ話(fairytales)」(※6)と喝破したグレタ・トゥンベリ氏等、Z世代を中心に「正義はクール/腐敗はダサい」というムーブメントが起きており、今後はこの流れが次代のスタンダードになるだろう(※7)。

グローバルサプライチェーンを分断し「100年に1度の危機」(※8)と言われる新型コロナ禍は、こうしたビジネスの「意義化」の流れを加速する。味の素グループは、米国等のアジアンヘイトで収入が減少する飲食店を救うべく、近所のアジアンレストランを探すキャンペーンを実施。#TAKEOUTHATEのハッシュタグで拡散させ、魅力の伝播に貢献した【図表4】(※9)。

では、実際にパーパスを深めるためにはどうすべきか。詳細は別稿に譲らざるを得ないが、まずは、5W1Hの中で最も深い思考を誘発するWhyからはじめよう。新型コロナ禍という「危機」は、深い思考のチャンスだ。哲学者ジル・ドゥルーズは、「人間は滅多に思考せず、むしろ何かショックを受けて思考する」と説く(※10)。思考の達人に言われると耳が痛いが言い得て妙である。組織は、危機における高次学習を通じてこそ飛躍する。この危機を、改めて自社の存在意義を問い直す機会にできるかどうか——今こそ企業、そして一人ひとりのビジネスパーソン(なぜ私は会社に存在するのか)の真価が問われている。

(※1)Colin Mayer, Prosperity: Better Business Makes the Greater Good, Oxford University Press, 2018

括弧内は引用者付記。利益を否定していない点に注意をしたい。ベニオフは、社会からむしり取るのではなく、平等で公平、かつ持続可能な「新しい資本主義」の必要性を説く。なお、同社時価総額は2021年9月3日時点。

(※4)Edelman, “2021 Edelman Trust Barometer Special Report: Trust The New Brand Equity,” 同調査において、商品やサービスの総合的な利便性(It is convenient to find, buy and use)以上に信頼が重視されている点に注意したい。なお、前掲のSalesforce社では、信頼(trust)をコアバリューに位置づけている。
(※5)Edelman, op. cit.、岩嵜博論・佐々木康裕『パーパス——「意義化」する経済とその先』、NewsPicksパブリッシング、2021

(※7)黒田早希「【イラスト図解】Z世代が加速する、「社会をよくする」ビジネス」NewsPicks、2021年8月23日。なお、NewsPicksの調査によれば、過去10年間でパーパスを扱うビジネス・経済関連の書籍は400冊超に及ぶという。

(※9)同社は、食や健康を通じた明日のよりよい生活への貢献を自社の存在意義として掲げている。
(※10)ジル・ドゥルーズ『差異と反復(上)』財津理[訳]、河出書房新社、2007

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