えっ!?プライム市場じゃなくて、プレミア市場?
2021年08月17日
2022年4月4日に東京証券取引所(東証)は新たな市場区分の体制に移行するが、市場関係者と話していると新設されるプライム市場をプレミア市場と言い間違える人にたまに出会う。東証にプレミア市場が生まれるというのは間違いであるが、東証の話ではないとすれば決して間違いではない。実は、同時期に名古屋証券取引所(名証)でも市場コンセプトの明確化と市場区分の名称変更が行われ、プレミア市場が誕生するからである。
現在の名証には3つの市場があるが、市場第一部はプレミア市場、市場第二部はメイン市場、セントレックスはネクスト市場へと2022年4月4日に変更される。市場第一部、市場第二部、JASDAQスタンダード、JASDAQグロース、マザーズという5つの市場をプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場に集約する東証とは異なり、名証の3市場の体制は引き継がれ、既存の各市場に上場する企業は変更後の名称の市場への上場が継続する格好となる。東証で行われている上場維持基準の適合状況の判定や上場企業による市場区分の選択も行われない。
では、なぜ名証は市場名の変更を伴う上場制度の見直しを行うのだろうか。東証での市場区分の見直しを契機として、東証との重複上場会社が多数存在すること、国内個人投資家主体の市場という名証の特性を活かした上場制度の整備を行うことが目的とされる。
そのため、プレミア市場の新規上場基準や上場維持基準は東証のプライム市場とおおむね同水準とされるが、東証には見られない一定数の個人株主の確保を求める上場維持基準等が導入されている。また、その一方で、機関投資家を意識した基準である流通株式時価総額基準は東証と違って導入されない。メイン市場とネクスト市場の基準は、それぞれ現在の市場第二部、セントレックスとほぼ同じである。
今回の上場制度の整備に関して名証が行ったパブリック・コメントでは、市場の名称は東証と同じにすべきという意見が寄せられた。これに対して名証は、「今回の上場制度の整備は、個人投資家主体の当取引所の市場特性や市場参加者の利便性等を踏まえ実施するもので、市場コンセプトや基準が東証と同一でないため、独自の名称としております」と回答している(※1)。国内にある各証券取引所がオリジナリティを発揮することは、株式市場や地域経済にとって意味のあることだろう。
(※1)名古屋証券取引所「『当取引所市場の特性等を踏まえた上場制度の整備について』に寄せられたパブリック・コメントの結果について」(2021年7月20日)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
政策調査部
主任研究員 神尾 篤史
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
「東海」「四国」など7地域で改善~石破新政権や海外情勢の動向も注視
2024年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2024年10月09日
-
『Operation Blotless攻撃キャンペーンに関する注意喚起』
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月09日
-
2024年6月株主総会シーズンの総括と示唆
機関投資家の議決権行使の同質化により議案賛成率は2極化
2024年10月09日
-
『国民を詐欺から守るための総合対策』の策定
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月08日
-
住宅ローン「5年ルール」は金利上昇から家計を守るか?
2024年10月09日