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共通点が多い「コロナ対策」と「脱炭素政策」

2021年01月14日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 保志 泰

新型コロナウイルスの感染急拡大に歯止めがかからず、政府は2度目の緊急事態宣言を発出した。今回は地域を限定し、飲食店に重点を置いたものとなった。この対策が十分なのかどうかの議論は分かれるが、効果が上がることを期待したい。

わが国のコロナ対策は基本的に要請ベースであり、他国と比べるとやや緩いとも指摘される。このコロナ対策について、菅内閣が掲げる脱炭素政策との共通点を感じるのは私だけだろうか。

共通点の一つは、いずれの施策も個人や企業の行動変容を促すものであることだ。行動変容を伴わなければ政策目的は達成されないにもかかわらず、基本的には要請ベースで強制力は弱い。人々の心に刺さるようなリーダーの言葉やショッキングな出来事がないと行動変容には結び付きにくい。日本社会独特の「周囲の目を気にする」風潮は効果を高める方向に働くかもしれないが、そのような不確実なものに期待してよいものか。実効性を高めるためのインセンティブとして、コロナ対策では協力金、脱炭素に向けては税制優遇措置などが準備されているが、劇的なものとはいえないだろう。

二つ目の共通点は、いずれも局地的な取り組みでは効果が不十分なことだ。ウイルスは容易に地理的境界を越えるため、国全体ひいては地球規模の対策が求められている。地球温暖化に関しては言うに及ばず、といったところだ。もちろん、国や自治体などがそれぞれの取り組みを行うことが大前提となるが、全世界の隅々まで連携して取り組むことで本当に効果が上がるものとなる。対立や分断が進みつつある世界にとって大きなチャレンジといえる。せめて米国のバイデン政権発足によって、少しは結束力が高まることに期待したい。

そして三つ目として、いずれも将来の文明や技術の進歩に期待していることでも共通しているように感じる。コロナ禍に対してはワクチン開発・接種が広がるまで頑張ることが前提になっているだろうし、脱炭素に関しては「イノベーション」に期待している側面が小さくない。不確実なことを前提としないと乗り越えられない、困難な壁であることを物語っている。

このような共通点を感じる一方で、決定的な相違点は時間軸である。コロナ対策はワクチン接種により集団免疫が獲得できるまでの対策であるが、2050年にカーボンニュートラルを掲げる脱炭素政策の時間軸は全く異なる。そのため脱炭素に関して切迫感は生じにくい。もっとも、イノベーションを前提とする中で決して時間に余裕があるわけではない。

共通点の多さだけ考えれば、コロナ対策の成否は脱炭素政策の成否を占うものとなる、といえるかもしれない。いずれにせよ、コロナも地球温暖化も、人類にとって大きな脅威であり、「他人事」として国の政策に任せるのではなく、すべての人々が「自分事」として捉えて行動することが最も重要であることは間違いない。

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