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Go To トラベル利用、「高価格帯に偏在」が意味する2つのこと

2020年12月07日

経済調査部 エコノミスト 鈴木 雄大郎

Go To トラベルキャンペーンが開始して4ヶ月あまりが経過した。新型コロナウイルス感染症の感染再拡大を受け、本稿執筆時点で政府は札幌市や大阪市への旅行での利用を一時停止した。他方、キャンペーンがコロナ禍で壊滅的な打撃を受けた宿泊業や観光業の業績回復に寄与したことは疑いの余地がない。

キャンペーンの利用が本格的に進んだ9月以降、高価格帯の宿泊施設に利用が偏っているという報道を目にする機会が増えた。2020年10月の地域経済報告(さくらレポート、日本銀行)でも、「『Go To トラベル』の押し上げ効果はみられるが、他の宿泊客との接点が少ない離れ型の個室や割引額の大きい高価格帯の客室に人気が偏っており、それ以外の客室との間で二極化の傾向がみられる」(大分〔宿泊〕)といったコメントが見受けられる。

しかしながら、キャンペーンの利用実績を見ると様子が異なる。図表はキャンペーンにおける一人泊あたりの宿泊代金の利用価格帯分布(7,8月)を示したものである。宿泊単価が5,000円以上10,000円未満の割合が37.4%と最も高く、次いで5,000円未満の割合が高い(26.5%)。この2つの価格帯が利用の過半を占める。一方、30,000円以上は全体の5.0%にすぎない。この結果を見ると、上記のコメントとは一致しない。

では、なぜこのような違いが生まれたのだろうか。その理由について2点指摘したい。

1点目に高価格帯の部屋が少ないことが考えられる。一般的に高価格帯の部屋は、低価格帯のそれよりも広くて設備やサービスが充実している。宿泊旅行統計調査(観光庁)から全国の宿泊施設をタイプ別に見ると、低価格帯の部屋が多いビジネスホテルは2019年12月時点で8,270施設だったのに対し、高価格帯の部屋が多いリゾートホテルは2,680施設と少ない。部屋数でみれば、よりその差は広がるとみられる。低価格帯、高価格帯ともに需要は回復傾向にあるものの、部屋数の多い低価格帯の部屋の稼働率は相対的に低水準にとどまり、高価格帯では稼働率が高まったことで、「高価格帯に人気が偏っている」と解釈されたのだろう。

2点目として、感染拡大が長期化する中で宿泊施設に滞在することを目的とした旅行需要を中心に回復しており、接触の機会を抑えやすい高価格帯の部屋の利用者数は平時よりも多いと考えられる。他方、ビジネスホテルなどの低価格帯の部屋は出張のほか、旅行先で何かを楽しむために利用されることが多い。しかしながら、多くの企業では従業員の出張を減らしてウェブ会議などに切り替えている。またスポーツイベントなど各種イベントは中止になったり収容人数を抑えられたりしている。そのため低価格帯の部屋に対する需要の回復は鈍く、稼働率の低さにつながっている。

各種報道によると、2020年度第3次補正予算案および2021年度予算案ではキャンペーンの2021年6月までの延長が検討されている。延長する際は、宿泊施設のタイプ別の利用実績や稼働状況などを踏まえ、割引率の設定を柔軟に変えることも一案ではないだろうか。

Go To トラベルキャンペーンによる一人泊あたりの宿泊代金の利用価格帯分布(7,8月)

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