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プライム市場への上場に有価証券報告書の英訳は必須?

2020年11月17日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

有価証券報告書等の英訳は必要なのか。このことについて多くの企業が気を揉んでいる。2022年4月に東京証券取引所(東証)の市場が再編され、新たにプライム市場、スタンダード市場、グロース市場(名称はいずれも仮称)が誕生するが、プライム市場への上場において、有価証券報告書等の英訳を行う、または行わない理由を説明するというなんらかの対応が必要になるかもしれないという話があるためだ。

プライム市場は、多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備えていること等が求められる。有価証券報告書の英訳は、より高いガバナンス水準を具備するという中で、議論の俎上に載せられている。議論が行われているのは10月に再開した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」という金融庁で行われている会議である。この会議は、来春に行われる3年に1回のコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂のためのものである。再開1回目の会議では、メンバーが今後の会議で検討すべき事項を議論し、その中でプライム市場の上場企業に対して有価証券報告書と株主総会招集通知の英訳を求める声があった。

しかし、東証が公表している資料によれば、2020年9月時点で市場第一部に上場する企業で有価証券報告書を英訳しているのは65社(全体の3%)、株主総会招集通知と関連書類を英訳している企業は866社(同:40%)である。株主総会招集通知等は一定程度が英訳されているが、有価証券報告書は限られた企業のみで行われている状況である。もし、英訳が必要になれば、上場企業のディスクロージャー関連事業を行う大手2社への依頼が急増することになると思われ、実際に対応可能なのかは分からない。なお、そのうち1社の2021年3月期第2四半期決算短信には、CGコードへの対応を背景として、英文翻訳サービス等の受注が増加しているという記載があり、すでにニーズが増えている様子が見受けられる。

また、プライム市場に上場する全ての企業に有価証券報告書等の英訳が必要なのかという論点もある。プライム市場には外国人投資家の株式保有がわずかな企業も上場すると思われ、現時点で英訳を求めることは必要性の観点から疑問があるという見方もある。

もちろん、CGコードは「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)という手法を採用しており、有価証券報告書等の英訳がCGコードで求められたとしても、説明することも可能である。CGコードの改訂議論に多くの企業が注目している。

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