地域金融機関はSDGsのKPIに「金融仲介機能のベンチマーク」の活用を
2020年11月10日
経営の持続可能性(サステナビリティ)を高めるため、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取組みを行う地域金融機関が増えている。全国銀行協会が2020年6月に公表した「全銀協SDGsレポート2019-2020」によれば、80%の会員行は既にSDGs/ESGに関する取組みを行っていると回答し、前年度調査の45%から大きく上昇した(会員行はメガバンクや信託銀行なども含むが約9割は地方銀行である)。
同レポートによれば、SDGs/ESGに関する取組みを行っている会員行でも、事業との紐づけはできているが、取組む優先順位を決定したり、進捗を測る目標(KPIなど)の設定まではできていない会員行が多いようだ。しかし、この優先順位やKPIの決定に関しては、既に各地域金融機関が公表している「金融仲介機能のベンチマーク」が一部活用できるのではないだろうか。
「金融仲介機能のベンチマーク」は、2016年に金融庁が提示した指標集である。金融機関が金融仲介の質を一層高めていくために、自身の取組みの進捗状況や課題等について客観的に自己評価できるよう設けられた。ベンチマークは自主的に開示した上で、ステークホルダーとの対話に活用することが期待されている。
金融仲介機能のベンチマークは、各行に共通する共通ベンチマークと、各行の状況に応じて選択する選択ベンチマークに分けられる。共通ベンチマークは、メインバンク先企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数・融資額の推移など5項目で構成されるが、選択ベンチマークは「法人担当者1人当たりの取引先数」「M&A支援先数」「運転資金に占める短期融資の割合」など、50項目ある。もし、それ以外の指標も活用したければ、各行で独自のベンチマークを設けることも可能である。
地域金融機関が金融仲介機能を発揮することは、地域企業の生産性向上などを通じ、地域経済の発展につながるものと考えられる。地域金融機関と地域経済の発展は表裏一体の関係であり、地域経済が持続的に発展することは、地域金融機関自らの持続可能性を高めることにつながる。そう考えれば、金融仲介機能のベンチマークと、SDGs/ESGの進捗を測る目標として設定する指標は、整合的であるべきだろう。
ただし、金融仲介機能のベンチマークは、特段環境や社会の視点を考慮したものではない。加えて、金融仲介機能に関わるものだけなので、自行の温室効果ガス排出量の削減、ダイバーシティの確保、労使関係などそもそもベンチマークに入らないものは、別途検討する必要があるだろう。
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金融調査部
主任研究員 太田 珠美
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