「GoToお城」で行こう!

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2020年11月02日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 増田 幹郎

この10月の初旬の日曜日、GoToトラベルを利用して愛知県犬山市の国宝犬山城を訪れた。お出掛けというと「テーマパークに連れて行け」としか言わない家族に恵まれてからは、お城巡りをする機会がめっきり減っていたが、今回は有り難い名目と機会を得て念願の初登城となった。

名鉄犬山駅で下車して数分歩くとお城へと続く城下町の通りに出る。遠目に天守を見ながら歩けるその通りの両側には歴史的な建造物が並び、風情のある町並みとなっている。だが到着時刻が遅かったため「まずは天守へ」とその町並みを尻目に先を急いだのだが、人出がかなり多い。良い季節の日曜日の午後であったこと、そして何より現存する日本最古の木造天守ということでそれなりの人出は覚悟していたが、予想以上の混雑だった。

ようやく登れた天守最上階からの眺めは本当に素晴らしかった。木曽川沿いの丘に建つ平山城の天守は天守台の下から見上げた時の印象よりもかなり高く感じ、そのうえ最上階を取り巻く回廊の欄干が低いため足がすくむこともあったが、念願の犬山城に登城できたことに満足した。一方で天守内では混雑のため順送りで先へ先へと順路を進む状況であったため、ゆっくり自分のペースで見て回ることはできず少し残念な思いもした。

せめてGoToトラベルの東京都除外の解除前に来ればよかった…と軽く後悔しながら、行きは足早に通り過ぎた城下町の通りをのんびり歩いてみると、皆で着物を着て連れだって歩くグループをちらほら見かける。また所々の古い塀の前でしきりにポーズを決めてはスマホのシャッターを切り合う着物の二人組もいた。その通りには古い町屋を利用して、おしゃれなスイーツを売る店などもあり若者のグループなどで大いに賑わっていた。

クーポンで五平餅を買い、広場のようなところで腰を掛けて頬張っていると着物を着てフルーツたっぷりのパフェらしきものを食べる若い男女の会話が聞こえてきた。「せっかくだからついでにお城にも行ってみる?」

「え?そなたたちはこの天下の犬山城の城下町に足を運び、登城もせずに帰るおつもりだったのか?」そういえば天守内の急階段で長い渋滞の先頭となっていたのも着物を着た若い女性だったことを思い出す。

近年は寺社の御朱印のような「御城印」を用意するお城もあり、城好きや歴史好き以外にも、お城巡りがちょっとした流行になっているようだ。城には行かないが“映え”を求めて着物で城下町に繰り出すこともその流れかもしれない。

当初は混乱したGoToトラベルも、コロナ禍で疲弊する地方の観光業にとって、一息つくきっかけとなった。城に興味がなかった層を呼び寄せたり、城下町のこれまでとは別の魅力を感じさせたりして街やお店に賑わいをもたらすなら、これらは新たな需要創造の成功例だと言えるだろう。城下町が潤えば、その中心である城やその周辺の街並みの存在や魅力に関心が高まる。もともと城巡りをしていた身からすると、それにより城や城下町の保全にも目が向いてくれれば嬉しい。

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マネジメントコンサルティング部

主任コンサルタント 増田 幹郎