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「規制改革」を成長戦略につなげるために必要なことは?

2020年10月15日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 保志 泰

菅内閣は基本方針において「規制の改革を全力で進める」とした。すでに具体的な改革メニューが俎上に載せられ、例えば押印の廃止などは実現に向けて動き始めた。

一方で、アベノミクスで積み残されたとされる「成長戦略」については、基本方針においても特別な言及はない。規制改革推進会議の下に「成長戦略ワーキング・グループ」があることを踏まえれば、規制改革の先に成長の果実があるとの考え方があるのかもしれないが、果たして規制改革は成長戦略の強力な手段となり得るのだろうか。

得てして規制・制度というものは、作ったそばから陳腐化し、時間の経過とともに何らかの改革・改正が必要になるものだ。「規制改革」が政府において組織的に取り組まれ始めたのは1980年代とされているが、未来永劫繰り返される「終わりなき課題」とすら言えるかもしれない。しかし、陳腐化したものを修正しただけで成長性が高まるというものではない。押印が廃止され行政手続きが電子化されたとき、様々な主体のコストは低減できるだろうが、それ自体は成長を生み出すものではない。

規制改革を成長へと結びつける分かり易い経路は新規参入の活発化だろう。ベンチャーが次々生まれるなど企業活動が活発化すれば、革新的なイノベーションが創出される可能性が高まる。そして日本経済全体の生産性向上が実現するという経路が理想的である。残念ながら、これまでそうした道が活発に開かれてきたとは言えない。その原因の一つとして、規制改革に際して国民の利便性を損なわないことが最も優先されてきたことがあるかもしれない。当然の考え方ではあるが、国民の利便性を維持するために結果的に既存の仕組みが残されてきた可能性がある。菅内閣が言うところの「前例主義」「既得権益」もそれを助長した形と言える。

これまでは、その考え方で良かっただろうが、少子高齢化、低成長などが重なるこれからの時代においては考え方を変える必要がある。そうでないと既存の仕組みから脱却できず、ベンチャーの活躍余地は高まらず、イノベーションも生まれないのではないか。

本質的なイノベーションには、破壊(ディスラプション)が付き物である。少なくとも新陳代謝が必要不可欠であり、ある意味表裏一体と言えるかもしれない。ディスラプションが起きれば、利便性が一時的に損なわれることは避けられない。そこで考えるべきは、利便性を損なわないために既存の仕組みをいかに残すかではなく、既存の仕組みが失われた場合に、どうしたらその機能を補完できるか、という発想の転換ではないだろうか。

そのためには、規制改革に際して官公庁の縦割り的な発想を変える必要がある。官公庁の縦横の連携が円滑に行えるようになれば、自由な発想で効率的な「機能の補完」が行われる実現性が高まるとは言えないか。

イノベーションを創出するのは行政ではなく民間であるが、行政がイノベーションの創出を助けようとするならば、それを前提とした横断的な規制改革・行政改革が求められる。まさに首相のリーダーシップが大きなカギを握ると言えそうだ。

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保志 泰

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