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中国:節約の大号令と食糧不足懸念

2020年09月10日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

2020年4月~6月の中国の実質GDP成長率は前年同期比3.2%と、同▲6.8%に沈んだ1月~3月から劇的な回復を見せた。牽引役は投資であった。一方、消費、中でも接触型消費の戻りは鈍い。7月のレストラン収入は前年同月比11.0%減と、2桁の減少が続いた。こうした中で8月11日に、習近平国家主席が飲食の浪費行為の抑制と節約を美徳とする旨の重要指示を発出したことが様々な思惑を呼んだ。中国の外食産業では1年間に1,700万トン~1,800万トンの食べ残しが発生し、これは3,000万人~5,000万人分の1年間の食料に相当するという。現地報道ではN-(マイナス)1やN-2などという言葉が紹介され、食事の際の品目数を人数から1品か2品減らすことを薦めている。浪費抑制・節約推進の主張は正しいが、レストラン収入の回復には逆風となろう。

似て非なる政策は2013年以降にも実施されたことがある。習近平政権は2013年に綱紀粛正を強化し、「三公消費」(公費による飲食、公用車の私的流用、公費による出張・旅行)が抑制された。当時は政府機関・国有企業・軍の「公務員の交際費天国」ぶりに大ナタが振るわれ、レストラン収入の伸び率は低下した。この名残は今でも感じられる。中国には茅台(マオタイ)酒という接待などで供される高級酒があるが、店がそれを仕入れ、客がそれを注文した記録が残るのを避けるために、客による持ち込みが常態化している。抜け道と言われればそれまでなのだが、少なくとも公費を使った飲食に対するチェックは続いているのであろう。

今回の節約の大号令は公務員限定ではなく、全国民が対象となっている。中国では大雨・洪水や干ばつの被害が拡大し、蝗害(※1)の可能性も指摘されるなど、食糧不足への懸念が高まっている。折しも政府系シンクタンクである中国社会科学院は、農民の高齢化や生産意欲の低下などにより、今後5年間で大豆を含めて1.3億トンの食糧の供給が減少する可能性があるとの予想を発表した。2020年4月17日の中央政治局会議で初めて言及のあった「六保(6つの維持)」(雇用、民生、市場主体、食糧・エネルギーの安定供給、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端組織運営の維持)で、食糧の安定供給が取り上げられたように、この問題に関する政策上の優先順位は上がっているのであろう。

この10月には2021年から始まる第14次5カ年計画の基本方針を決定する重要会議である、第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開催される。三農(農村・農民・農業)の改革を如何にして深化していくのか、食糧を如何にして確保していくのか。中国の食糧需給バランスの変化は世界の市況にも大きな影響を与え得るだけに、今後の動向が注目される。

(※1)こうがい。バッタやイナゴなどの異常発生により穀物等が食べ尽くされる害のこと。

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