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ネガティブ・スクリーニングはESG投資ではない?

2020年09月03日

政策調査部 主任研究員 鈴木 裕

ESG投資についてたびたびレポートを作成してきたが、そもそもESG投資とはどのようなものか、私は全然わかっていなかったようである。

サステナブル投資(社会的責任投資(SRI)、ESG投資等)を日本で普及・発展させる活動を行っているNPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が、先月、ESG投資の定義について解説記事を掲載した。表題は「ネガティブ投資・インパクト投資はESG投資ではない」(※1)だ。これには、「ネガティブ投資は、この最初の段階で、社会や未来の世代にとって望ましくないと考える特定の銘柄を一律的に除外する手法です。この投資は投資の分析と決定をする前段階で投資対象から除外して投資対象とはしないので、ESG投資と考えられていません。」と記されている。「インパクト投資」についても、「ESG投資と考えられていません。」とのことだ。この記事では、「ネガティブ投資」、「インパクト投資」、「ESG投資」等をまとめて「サステナブル投資」と表現している。「ネガティブ投資」は、「サステナブル投資」であるが、「ESG投資」ではないということだ。ESG投資と他のサステナブル投資を分ける最大の違いが、「ESG課題を投資の分析と意思決定プロセスに組み込んでいるかいないか」(JSIF「ポートフォリオ構築プロセスから見る運用手法の違い」)(※2)という点だという。

ESG投資を扱った過去の私のレポートの中では、「ネガティブ投資」ではなく「ネガティブ・スクリーニング」という用語を使っていた。古くは、宗教団体の基金運用で、宗教的価値観からギャンブルやアルコール産業を投資対象から除外してきたが、現代的には、公私様々な資金の運用でクラスター爆弾関連や石炭産業への投資を避ける行動へと広がっており、「ダイベストメント」といわれることもあると理解していた。ネガティブ・スクリーニングは、世界のESG投資において投資手法別で最も大きな比率を占め、年金・保険・投信の資金の多くがこれに投入されている、という説明を目にすることもよくあり、ESG投資の最もありふれた手法の一つだと思い込んでいた。

日本のESG投資の資金規模に関するデータをJSIF以外に求めることはまずない。官庁でも利用されており、例えば環境省のESG金融解説動画(※3)の「Chapter 5:世界の潮流と日本のESG金融動向」(令和2年8月28日視聴)では、JSIFのデータを用いて日本のESG投資の規模を説明している。国立国会図書館のレポート(※4)をはじめ、ESG投資に関する各種の公的な研究会や報告書の中でも、データの出所として使われる。こうした影響力や信頼の大きさを考えると、今後ESG投資を説明する際には、「ネガティブ投資・インパクト投資はESG投資ではない」と記すべきなのかもしれない。

当社の私以外の職員が作るレポートでも、他社のレポートでも、現在や過去のESG投資の規模を表す図表やグラフで、ネガティブ・スクリーニングを一つのカテゴリーとして示すのはよくあることなのだが、これからは書き方を変えなければならなくなるのだろうか。あるいは、公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構「年金SRI研究会平成25年度 報告書」(※5)が記すように、「さまざまな呼称の間の細かな差異を議論する実益は乏しく、大括りに、財務情報だけでなく非財務情報も考慮する投資と捉えることが適切である。」と考えるべきだろうか。

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