急がれる気候変動適応へのテクノロジー活用
2020年07月16日
やはり今年も甚大な災害が起こってしまった。毎年のように「数十年に一度」というフレーズを聞き続けている気がするが、過去に遡った確率で表現することに意味があるのか疑問すら感じるところだ。
風水害の多発は近年の気候変動問題、すなわち地球温暖化と密接な関係があることは疑いないだろう。ゆえに今後も風水害の発生は半ば「常態化」していくことを前提に考える必要がある。気候変動対策に関しては、温室効果ガス排出量を減らす「緩和策」に焦点が当たりがちで、風水害への対応といった「適応策」に対する注目度が低いようにも感じる。しかし、日本において喫緊の課題はこの「適応策」であり、まさに目の前の人の命にかかわるものである。
防災・減災に関する施策については、本来は国や自治体が担うべき部分が大きいが、想定を超えるような災害が頻発する中、国や自治体の力だけでは当然ながら十分でない。住民や地域コミュニティにおける自助・共助が極めて重要なカギを握ることは、今回の災害からも明らかである。そうした自助・共助をサポートするような仕組みが是非とも欲しいところだ。
球磨川の氾濫などを契機に、ダムや堤防などハードインフラの整備に関して議論が進むことも予想されるが、コストの問題が大きな障壁にならざるを得ない。ICTなどのテクノロジーを用いてソフトインフラの強化を同時に進めることが、コスト的にも時間的にも効率的となる可能性が指摘される。
昨今のコロナ禍においては、接触確認や人の流れの把握などテクノロジーの活用が進んでいる。スーパーコンピューター「富岳」による飛沫感染のシミュレーションも注目された。「気候変動適応」に関しても、現在のテクノロジーを駆使することにより、例えば、よりリアルタイムの情報把握・提供が可能になるかもしれないし、それにより住民の迅速な避難行動を促すことができれば被害の抑制につなげられる。
テクノロジー活用において重要なプレーヤーとなるのは企業ではないだろうか。近年のESG重視の流れの中、上場企業には気候変動問題に対する取り組みが求められ、前向きに取り組み始めた企業も少なくない。ただ、「適応」に関しては、取り組んでいても自社の事業活動継続が主眼であり、社会全体の「適応」に資する取り組みを行っている企業は、そう多くはないかもしれない。幅広い企業が「適応」に積極的に取り組むことが是非とも求められる。逆に言えば、企業というプレーヤーを抜きにしてテクノロジーの開発・利用のテンポアップは期待しにくいだろう。
スピードやコストの面からも効率的なテクノロジー開発を進めるために、民間企業や産官学連携による取り組みの促進が必要である。行政による制度的あるいは財政的な支援が積極的に行われることを期待したい。
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