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養育費立替制度、明石市が全国初の導入へ

2020年06月30日

経済調査部 研究員 田村 統久

新型コロナウイルス感染拡大に伴う企業業績の悪化を受けて、家計所得に減少圧力がかかる中、行政当局はひとり親支援策の強化に乗り出している。多くの自治体がひとり親世帯に一時給付金を独自に支給しており、国も低所得のひとり親世帯に5万円を支給する施策を第2次補正予算に盛り込んだ。ひとり親世帯はもともと経済基盤が脆弱で貯蓄が少なく、所得の減少が生活の困窮に直結しやすいため、経済ショック時に支援を強化する意義は大きい。

こうした中で筆者が注目しているのは、2020年7月に兵庫県明石市で導入される養育費支払いの「立替制度」だ。この制度は養育費の支払い義務者(=非監護親)が養育費を支払わない場合に、(行政を含む)第三者が養育費相当額を支払った上で、非監護親から費用を回収するという仕組みである。明石市は今回、1ヶ月分の養育費に限り立替払い(上限5万円)するようだが、行政による養育費の立替払いは全国初の試みだ。

養育費支払いの立替制度に関しては、以前から導入の必要性が指摘されていた。ひとり親の多くは養育費を受給しておらず、そのことが経済的困窮に直面する一因となっているからだ。厚生労働省「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査」をもとに試算すると、ひとり親のうち「現在も養育費を受けている」割合は21.5%にとどまる。

行政による立替制度が機能すれば、ひとり親世帯は非監護親が実際に支払ったかどうかに関係なく、確実に養育費相当額を受け取ることができる。養育費不払いのリスクは事実上行政が引き受けることになるため、資金の回収がうまくいかない場合は財政負担が発生する。こうしたデメリットよりも、ひとり親に養育費相当額が行き届くことのメリットを重視しているのが立替制度であり、スウェーデンやドイツなど、欧州諸国の一部では国レベルで定着している。

もっとも、養育費不払いの問題の解決を図る上では、立替制度の導入のような養育費の不払いが生じたときの対応強化だけでは不十分で、養育費不払いを未然に防ぐ取り組みも欠かせない。この点、明石市は以前から養育費不払いの問題解決に幅広く取り組んできた自治体であり、今回の制度導入の背景にも長年の検討の蓄積がある。新型コロナウイルスの流行を受けた限定的な措置ではあるものの、立替制度の導入が画期的であることは間違いない。明石市による制度導入の効果に注目していくとともに、今後は自治体レベルだけではなく、国レベルの養育費立替制度に関する議論の深まりにも期待したい。

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