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コロナ禍の供給制約がもたらす所得減と需要ショック

2020年06月22日

経済調査部 研究員 小林 若葉

過去の景気後退の多くは需要ショックによって引き起こされたものであったが、新型コロナウイルス感染拡大は需要ショック、供給ショックの両側面を持つ。今回の需要ショックは不要不急の消費自粛や訪日外客の減少などによる需要減であり、供給ショックは感染拡大防止のための休業や工場稼働率の低下のほか、テレワークを余儀なくされたことによる業務効率の低下などが挙げられる。

需要ショックと供給ショックのどちらの影響が大きいかによって、求められる政策の中身は大きく異なる。前者の場合、公共投資拡大や給付、減税などの需要喚起策が効果的だが、後者の場合、供給制約の要因を取り除くことが重要だ。

これに関してGuerrieri et al.(2020)(※1)は、新型コロナウイルス感染拡大による経済危機は供給ショックが端緒となり、さらに深刻な需要ショックを引き起こすと指摘する。すなわち、2つのセクターが存在する不完全雇用下の経済モデルにおいて、感染拡大防止策によって1つのセクターが閉鎖される場合、そのセクターの従業員は所得を失い、もう一方のセクターで購入する財やサービスの量を減らそうとする。結果として閉鎖されなかったセクターでも需要ショックによって経営が維持困難になり、閉鎖に追い込まれる。このように供給ショックが需要ショックを誘発し、景気をさらに悪化させる可能性が示唆されている。

上記論文では、今回の経済危機の場合、感染拡大防止策と並行して、閉鎖されたセクターの従業員への生活支援や金融緩和が有効だとしている。実際、各国政府や中央銀行が異例の規模で実施した財政・金融政策はこうした考えに即したものであり、本稿執筆時点では供給ショックによる需要ショックの誘発をある程度抑える役割を果たしたといえよう。

日本では、失業率や倒産件数は最新の公表データである4月まで低水準で推移している。もっとも、非労働力人口や休業者は顕著に増加しており、厚生労働省によれば、解雇や雇い止めをされたり、事業者側にその見通しがあったりする働き手が5月に入って急増したという。こうした人々の所得減が大規模な需要ショックにつながらないか注視する必要がある。

一方、感染収束後に人々の消費意欲が回復しても、ソーシャルディスタンスを確保するため供給能力が十分に回復せず、供給が需要に追いつかない可能性がある。供給制約により、幅広い業種の企業収益の回復が長期間にわたって妨げられると、収益率の低下で雇用や賃金水準の調整が促され、それが新たな需要ショックを引き起こすことも考えられる。企業の合理化・省力化投資や、労働者が成長分野に移りやすい流動的な雇用システムの構築、労働者の能力開発支援などを推し進める必要性がウィズ・コロナ時代に一層高まるかもしれない。

(※1)Guerrieri, Veronica, Guido Lorenzoni, Ludwig Straub and Iván Werning (2020) "Macroeconomic Implications of COVID-19: Can Negative Supply Shocks Cause Demand Shortages?" NBER Working Papers 26918.

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