コロナ禍は地方創生にとって追い風?

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2020年06月09日

  • 鈴木 雄大郎

新型コロナウイルスの感染拡大は、経済の悪化のみならず社会生活にも大きな影響を与えている。当社も例外ではなく、テレワークの推奨やWeb会議、Webでの就職活動の面接などを行っている。今回のコロナ禍は、多くの企業においてこれまでの働き方の見直しやBCP(事業継続計画)などを見つめ直すきっかけとなったことだろう。また企業のみならず、学校においても授業がオンラインで行われるなど、あらゆる面でデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せている。

新型コロナウイルスは観光業や娯楽業などを中心に地方圏にも深刻な打撃を与えたが、東京一極集中の是正・地方創生という長期的な視点に立った場合、追い風となる可能性を秘めている。地方創生の施策・政策を取りまとめた第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2019年12月)では、テレワークの推進や地方でのサテライトオフィスの設置、BCPとしての拠点分散の推進は東京一極集中の是正に効果があるとしている。

図表は地方圏から東京圏への年齢階級別の転入超過数の推移を示したものである。転入超過数が最も多いのは20~24歳である。次いで、25~29歳、15~19歳と若年層が多い。これは、就学・就業のタイミングで東京圏へ流入していることが要因だと考えられる。こうした若年層の東京圏への人口流入は短期的には社会増減によって、また長期的には、自然増減によっても一極集中を招く可能性がある。流入した若年層が子供を産んだ時、その子供は地方圏との関わりが薄いまま、東京圏に定住してしまうからである。そのような状況になると、東京一極集中の解消はより一層難しくなるため、若年層の転入超過の是正は地方創生にとって喫緊の課題である。

しかしコロナ禍によって、大学の授業や就職活動、さらには企業のテレワークや拠点分散が標準化していけば、就学・就業のタイミングで、東京圏へ転入する必要がなくなる可能性がある。

政府は、地方創生・東京一極集中の是正は2060年までの長期的な課題として粘り強く取り組む方針を示しているが、コロナ禍によって生じたデジタルトランスフォーメーションの波は、東京一極集中を是正できる大きなチャンスとなるだろう。

ただし、こうした動きが加速するかどうかは、変革の機運が高まっているこの数年間のうちに定着にまで至ることが鍵となる。感染収束後にコロナ禍以前の在り方に戻ってしまっては絶好の機会を失うことになってしまうことになろう。

これまでも震災や台風などの自然災害に見舞われた度に、テレワークやBCPは議論されてきたが、人材集積のメリットを上回ることができず、本格的な導入には至らなかった。コロナ禍はこれまでと異なり、集積することのリスクを浮き彫りにした。今回こそは、企業によるテレワークの拡大、BCP拠点の分散が定着し、長期的には地方経済にとってプラスに働くことを期待したい。

年齢階級別東京圏への転入超過数

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