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広がる在宅勤務、変わる需要構造

2020年04月28日

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の発出などを受け、在宅勤務などのテレワークが急速に広がっている。多くの企業はIT機器やネットワーク環境の整備に加え、紙の使用や捺印、署名といった手続きの見直しに迫られているが、感染終息が見通せない以上、最優先の課題として取り組むだろう。

従来、在宅勤務は育児や介護などを理由とした「例外的」な働き方と位置づけられることが多かった。それが「一般的」になると、例えば従業員は猛暑や大雪の日に無理に出社する必要がなくなり、勤務時間の節約や通勤ラッシュの緩和が期待できる。企業にとっても、多様な働き方を認めることで人材の確保が以前よりも容易になり、自然災害などの発生時に事業を継続させやすい。危機対応策として全国的に導入されたリモート体制は労使ともにメリットがあり、感染終息後に元の体制に戻るインセンティブは小さい。企業は業務の性質に鑑みて「出社」と「在宅」をうまく組み合わせ、収益の拡大を図ろうとするのではないか。

働き方が変化すれば様々な需要も変化する。ミクロ的な観点からは、出社頻度が低下することで交通費やビジネス服、外食などへの支出が減少し、通信費やカジュアル服、内食・中食といった需要が高まるだろう。一方でマクロ的には、労働需要と不動産需要などが変化する可能性がある。

新型コロナウイルス発生前から、企業が働き手に求める仕事は新商品やサービスの企画・開発や対人業務など、マニュアル化できない非定型業務へシフトしていた。在宅勤務の拡大に伴い、急速に進められている各種業務のデジタル化はこうした流れを加速させ、一般事務などの定型業務は減少するとみられる。また多様な働き方が広がることで、総合職に代表される「メンバーシップ型」雇用が縮小し、仕事に雇用が紐づく「ジョブ型」が拡大することも想定される。働き手に求められる専門性や業務遂行能力は一層高まりそうだ。

他方、オフィスに全員分の業務スペースを確保する必要性や、従業員にとっての通勤距離の重要性は低下するだろう。これは商業用不動産の需要減少や住宅需要の分散化を通じて、特に都市部で高騰している不動産価格の調整を促すことになる。2012年12月の第2次安倍政権発足以降、不動産市況は景気回復と超低金利に支えられて好調に推移してきたが、足元の急速な景気悪化と需要構造の変化によって曲がり角を迎えつつある。

新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響は一過性ではなく、人々の行動に不可逆的な変化をもたらすものと捉えるべきだ。

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