コロナ後も重要な生活習慣病対策

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2020年04月21日

新型コロナウイルスに感染しても、軽症で経過し治癒する人も多いと聞く。ただし、基礎疾患を有する人は、感染した場合に重症化するリスクが高いと考えられている。基礎疾患には、糖尿病等の生活習慣病が含まれる。今回のような感染症の流行の有無にかかわらず、様々な病気を重篤化させるリスクが高い生活習慣病の予防や重症化防止に向けた対策は、引き続き重要だ。

生活習慣病の予防・重症化防止に向けた対策の一つに、特定健診・特定保健指導がある。厚生労働省は「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」のとりまとめ(令和元年5月29日)の中で、特定健診の実施率を2023年度までに70%以上、特定保健指導の実施率を2023年度までに45%以上とする実施指標を掲げている。政府全体のものとしても、「新経済・財政再生計画 改革工程表2019」(令和元年12月19日、経済財政諮問会議決定)で、同じ指標が改革のKPIに採用されている。2017年度時点の実施率はそれぞれ53.1%、19.5%であり(出所:厚生労働省「2017年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況」)、目標値を達成するには関係者の取り組みと人々の意識改革が必要である。

2017年度の状況を保険者別に見ると(出所:前掲資料)、特定健診については、共済組合(77.9 %)や健保組合(77.3%)の実施率が80%近い一方、市町村国保(37.2%)は40%以下にとどまっている。また、特定保健指導については、いずれも45%に達していないが、船員保険(7.6%)や国保組合(9.3%)、協会けんぽ(13.2%)で実施率の低さが目立つ。

これらは個々の保険者別にも確認できる。市町村国保(2017年度の保険者数1,738)は特定検診の実施率が平均的に低いが、中には70%を達成している保険者が19ある一方、20%以下の保険者が15ある。実施率20%以下の保険者のうち、12は北海道の保険者である。全国で最も保険者数が多い北海道には、70%を達成している保険者も4つあり、道内でのばらつきが大きい。

また、共済組合は特定健診の実施率が平均的に高いとはいえ、取り組みが遅れている保険者もある。85の保険者のうち、70%に達していない保険者は8あり、そのうち6つは国家公務員とその家族が加入する医療保険である。

特定健診・特定保健指導の実施率を向上させることで疾病予防や重症化予防が進めば、一定の医療費適正化にむすびつくだろう。だが、それ以上に重要なことは、自らの生活習慣を見直すきっかけとすることで、生活の質を改善させることである。健康を維持すれば高いパフォーマンスで働き続けることができ、自身の報酬を増やすだけでなく、経済全体の生産性向上にも貢献する。特定検診・特定保健指導の実施率が低い保険者は、その原因を分析し、対策を講じる必要がある。

今後も同じような感染症の流行があった場合、基礎疾患があれば、ない人と比較して重症化するリスクは高いだろう。今回の新型コロナウイルス問題は、平時からの備えの一つとして、徹底した生活習慣病対策の重要性を再認識させている。

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執筆者紹介

政策調査部

研究員 石橋 未来